二世帯住宅の間取り

ユーザー ❨株❩アトリエ Y&R 栗城裕一 の写真

 二世帯住宅は、とても多く作られています。土地の値段が高い日本では、一つの敷地に親世帯、子世帯が共に住むことができる二世帯住宅は経済的だと考えられていることもありますし、働き方の点から都合が良いということもあるでしょう。しかしこの住宅の形は経済的な観点のほかに、精神的な心の観点からの作り方であるということもできます。老人が若年層に与える精神的な影響はとても大切な何かを含んでいます。それは知識、経験などを総合したもののほかに、人が生きていくということのぼんやりとしているかもしれないけれど、自分自身をみつめ成長していく、生きていくための芯を形成していくことに大きく寄与するものでもあります。弱いものに対する思いやり、助け合うことの尊さ、年齢に関係なく喜び、悲しみ、笑いあえる、人生の楽しさ-豊かさに気づかされることがとても大切なことに思えます。これらは言ってみれば想像力を培うということになります。人の社会にあって、この想像力がどれほど大事なものかは多くの人がお分かりいただけるものと思います。この力があると隣人トラブルなども減りますし、事故や犯罪も減っていくものと信じています。
 このような観点から、この形式の住宅を考えると建築的にはどのようになるでしょう。それは、たえず、お互いの気配を感じることができ、声を掛け合える装置としての住宅、そしてなおかつそれぞれの生活を邪魔しないという一見矛盾したようなことを解決できるという空間づくりを目指すということになります。
 ざっくり表現すると出会いの場を仕掛けるということです。それには、さまざまの手法があります。たとえば、共有の居間を設ける方法とか、玄関・ホールを共有にして出会いの場を造るとか、玄関が別々でもそれぞれの生活空間に至る際に動線が交差するといった方法(これは設計テクニックとしてはやや高度になります)などが考えられます。
 寝室がそれぞれの分だけ用意されていて、台所や居間・食堂、浴室などはすべて共有であればこれは二世帯住宅というより大家族住宅ということになるでしょう。この形式で楽しく住まうことができればそれは最高に素敵かもしれませんが、世の中そう簡単にはいきません。台所は別々にしたい、浴室も別、といった希望はどこのご家庭でも持たれることです。
 完全に分離されたものを造るとそれは集合住宅に住んでいるのと変わらなくなります。いっそ、同じマンションに住むということが簡単だということになります。これでは、戸建て住宅で二世帯住宅を造るメリットはありません。
 これから二世帯住宅を造られる方は、今一度どのように暮らしていくか、暮らし方を想像してその住宅の姿を見つめなおしてくださることを願っています。