渡辺篤史の建もの探訪ー家の中にツリーハウス(亀井寛之+廣瀬悦子、spectacle+seets一級建築士事務所)

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建もの探訪ファン
感想: 

メリークリスマス!
宗教的には関係ないけれど、友達や家族が賑やかに集まったり、
プレゼントを準備したりするのはやっぱり楽しい。
自分たちなりの季節のイベントにしたい。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「家の中にツリーハウス」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/46
佇まいも暮らし方も、ひとつのアートのようだ。
 
             ◇ ◇ ◇
 
この広々とした緑、どこだろう?
栗の木に囲まれて建つ、イエ型の白い家。
果樹園の一部でもある庭は自然の野っ原のよう。
手入れ不足の庭とは違う、手を加えすぎていないのだ、という独特な雰囲気は
建ものにすごくよく合っていて、まるでひとつのアートのようだった。
 
場所は三鷹。
都内でこの環境とはびっくりだけれど、
都会独特の創造力と活力が感じられる、
素敵な建ものと暮らしに納得だ。 
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
このお宅では、この恵まれた環境での空間を自分たちだけのものにするのは
もったいたいことと、この建ものを利用して、
様々なイベントやワークショップを開かれているという。
そのようなイベントスペース兼自宅としてのアイディア、
そして単に家族が日々の暮らしを営む場としての
家族それぞれの居場所づくりの考え方は、
とても優しく心地よいものだった。
 
今回のタイトルが「家の中にツリーハウス」となっているように、
この建ものは、1階、2階、3階という形とは少し違う。
ほぼ3階分の最大約8mの高さの吹き抜けに、
4.5畳の箱がポコ、ポコと据えらえている。
建ものの片側には、玄関ホール、水廻り、台所・食堂、階段室、収納、
そして通路が木の幹のようにまとめられていて、
箱にはそこから橋が架けられているような形だ。
 
1つ目の箱は、3分の1ほどが埋まって(掘り下げられて)いる。
この箱の中はご主人の仕事部屋で、
箱の上は家族だけのくつろぎスペースになっている。
2つ目の箱は2階の高さにポコンと浮かぶ。
こちらは女の子一人の子供部屋。
3階部分は踊り場、収納、寝室の3つが連なっていて、
それもやはり空間に浮かんだような形になっている。
どの箱にも室内を望む窓がある。
そして出入り口に扉はない。
 
4畳半、それは果樹園の栗の木1本が枝葉を広げる広さという、
この家ならではの尺度に基づくものだけれど、
それは一人になるにも、家族が親密に集まるにも心地よさそうだった。
そしてそれぞれの距離感は絶妙だった。
特に1つ目の箱の上にある家族だけのくつろぎスペース。
これは1階の居間からは覗き込めない高さだけれど、
手を伸ばせば握手できるほどの高さ。
この家の者としてイベントをすっかり見渡し参加もできるが
守られている、そんな位置なのだ。
また、扉はなくとも橋や階段を通って箱の中に入ることで、
その箱が独立した場所であるという意識が高まる。
そして窓は、優しく空間を繋ぐ。
 
家族以外の人にも開放される居間との関係、
家族がいる場所としての居間との関係が
とても丁寧に組み立てられた素敵な建ものだ。
 
             ◇ ◇ ◇
 
イベントスペースとして、台所・食堂も工夫されていた。
居間と台所・食堂との間には、腰の高さの壁とドアが設けられていた。
食堂が居間とは分離されていることで、イベントの準備をしながら
腹ごしらえなどできるだろうし、家族も使いやすい。
カフェや食事会などのイベントでは、食堂が十分な作業スペースにもなるだろう。
分離されているけれど、顔が見えるし一体感もある。
 
カウンター型、独立型、壁付き型、、、、いろんな台所や、
台所と食堂、居間との関係をこの番組を通して見てこれたけれど、
こういう形、ありそうでなかったと思う。
この距離感もまた、なかなかよさそうだ。