渡辺篤史の建もの探訪ーキュビズム絵画を思わせる家(河内一泰、河内建築設計事務所)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

最近は、毎日娘と追いかけっこ。
棚の中身は引きずり出され、椅子はあっちこっち。
直してはちらかり、直してはちらかり。
すぐしまえるように整理するから、あちこちすっきりするけれどもね。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「キュビズム絵画を思わせる家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/1
大人の大きな工作みたい。
 
            ◇ ◇ ◇
 
もともと8戸が入るアパートだった木造の建もの。
バッサ、バッサ、バッサと壁と床を切って、
そして現れた幾何学的な面というか空間を大胆に色づけした。
まるで牛乳パックにハサミで切り込みを入れて、絵の具でちょいちょいと塗るみたいに。
古着のリフォームみたいに。
なんだか、「建もの」に対するものではないような、自由で斬新な発想でのリノベーション。
渡辺さんも同じようなコメントをしていたけれども、
人間の想像力ってすごいな、面白いなと、嬉しくなった。
 
ただ、これは住宅なのだ。
驚きました、と、お住まいのご夫婦は語っていたけれど、
驚いて、どんなふうに考えてGO!を出したのかしら、と、そこが知りたい。
ご夫婦の装いや雰囲気にはこの斬新なお家に通づるものをあまり感じなかったから、
なんだか不思議な感じがしたのだ。
建築家と、どんなふうに出会って、どんな話をして、どんなふうに作り上げたのか。
 
それでも、ご一家4人は皆、この家の中にお気に入りの場所をちゃんと持って、
すごく居心地よさそうにしているように見えた。
奥まった隅っこという感じの読書室、たっぷり広さのグランドピアノの部屋、
リビングを見下ろせる自分の部屋、室内バルコニー、、。
家族4人は皆、ここでの暮らしを楽しんでいるのだと、そう思った。
 
            ◇ ◇ ◇
 
私は、時を重ねるごとに味わいが出るような素材のいい家がいいと思っている。
建ものからすごく刺激的な印象を受けて毎日を過ごすには、私はあまりに弱い。
そして、広すぎるより小屋みたいな家で丸まって暮らす方が心地よいと思う寂しがりだ。
だから住宅としてのこの建ものは、私にとってはざわざわとして、ちっとも心地よくない。
でも、真っ白でなんの変哲もない外観からは想像できない内側の面白さ、
どこまでもどこまでの続いているような、時の歪みすらあるような不思議な空間の広がり、
そんなものがすごく印象的で、ここで暮らすと何が起きるのか、
自分の目と体で感じてみたい気がする。
 
この建ものは、こんな暮らしがしたい、という住む人の思いに寄り添うような建ものではなく、
一人ですっくと立っていて、暮らすならどうぞお入りなさい、そう言っているようだ。
そんな建ものだからこそ、これからこの家での暮らしが積み上げられていくの中で、
建ものと家族とがどんな関係になっていくのか、どんなふうに変化し、育っていくのか、
私はそれをぜひ見てみたいと思う。