都市木造で補助金を得ながら学校建築・人・建築設計所 高橋貴大さん
学校のビジョンを明確にして、それを情報発信していくことに「木造の校舎」が使えます。
学校について人・建築設計所 高橋貴大さんに伺いました。
貴社が学校を手がけたキッカケがありましたら教えて下さい。
私は、もともといた会社でモデルハウスの設計や住宅システムを開発しておりました。
開発では、数多くの試作と検討を重ねて、作り上げていくのですが、その協力をしていただいていた小澤建築工房という山梨の工務店があるのです。
この工務店は、いわゆるデザインができる工務店で、全国でもその信奉者がたくさんおられます。
多くの有名な建築家たちも、山梨や長野の仕事は小澤に頼みたいというような工務店。
たとえば永田昌民さんや奥村昭雄さん、秋山東一さんという大御所から、若手では堀部安嗣さんなんかも使っているようです。
そんな時、バイリンガル幼稚園を野沢正光さんが設計し、小澤が建てました。
その園長が相談を受けた新設校の話が小澤に行き、なぜか有名建築家ではない人・建築設計所の高橋に来たと、そんな経緯です。
住宅システムの開発で、木構造を学んだことや、そこでできた人とのつながりが、最初のきっかけとなりました。
学校の外観をデザインする際に注意しているポイントを教えて下さい。
力の伝わりを感じさせるフレーム、じっくりと愛されるようなシンプルで明快なもので構成されるよう意識しています。
子どもたちための建築といえども、子どもじみたデザインをテーマにすることはありません。
彼らをしっかりと見守る建築ですし、そこで彼らは成長をしていく訳ですから、本当に良いものを見極めていける大人になって欲しいと考えて、将来胸を張って「わが母校」といえるデザインとしています。
また、外観の色は、姉妹校で共通している屋根の色がオレンジ色なのですが、それにマッチするものとして、ベージュ、ブラウン、ブラックで統一しています。
学校は小学校、中学校、体育館、寄宿舎からなる6棟の建築群となっているのですが、建物が織り重なっても、この配色によってバランスがとられ、一体のものとなっています。
学校の内装をデザインするときに注意しているポイントを教えてください。
木の温かみを感じさせながらも、明るくなるような配色に心がけています。
木のデザインは張りすぎるとどうしても暗くなってしまいます。壁天井面は、特に防火の関係も出てきますので、明度の高い色に仕上げています。
また梁なども、見せられるところは積極的に見せています。これは2階建てになるとスパンがあるので、かなりの梁成になります。
これを階段の蹴上げの低い小学校で実現するのですから、構造を見せるというのは理にかなっているのです。
もちろん、内装制限などもクリアしつつということになります。
南アルプス子どもの村小学校は木造校舎なのですね。木造校舎のメリットを教えて下さい。
木造校舎は火災のことを意識して、設計すれば、住宅と同じように満足度の高い建築が容易に作れます。
たとえば、施主の要望により変更が出たときに対しても、柔軟に対応できる点が優れています。
これにより完成度が飛躍的に高まることは事実です。
逆に、できてしまうことによる問題点もありますね。
また、施工に関わる人が住宅関係を手がけていることが多く、非常に丁寧で、良い仕事をしてくれます。
そして、期待以上に木の持つ温かさ(見た目も雰囲気も触り心地も)を感じられます。
今回、木造の体育館を設計し、竣工したのですが、同じフレームを金属に置き換えたら何の魅力もないと容易に想像できます。
見た方は、「わあ素敵!」って必ず言ってくれるので、これが木の持つ魅力なのだと感じました。
学校建築には建築基準法以外になにか基準があるのでしょうか?
学校関係は文部科学省管轄の学校教育法の設置基準、同省の学校保健安全法があります。
消防法では、屋内消火栓設備、面積によって屋外消火栓設備の設置が必要で、今回は自動火災報知器、消火器、屋内消火栓設備、誘導標識などの設置をしました。
また、都道府県の条例により、出入り口、廊下、トイレなどに基準が設けられていますので、これらの確認が必要です。
事務所などを学校にコンバージョンする仕事も引き受けていただけますか?
全ての仕事、頼まれごとを全力であたり、そこに楽しさを見つけていく。これが人・建築設計所のモットーです。
ただし、事前調査して運用、運営がきびしいようであれば、施主にとって負の資産となります。
ただ仕事をこなすだけではない提案をします。
学校を建てたい方になにかアドバイスがありましたらお願いします。
少子化で学校経営も先行きの不安から、他の事業を広げていかれることもありますね。
しかし、他の事業にはそれなりに人を雇うこととなり、新しい経営手腕も必要とされます。
不安材料を払拭して、人気校となるにはタイムリミットがあります。
それを過ぎてしまうと、まず新築は難しくなり、古い校舎の維持管理費が増えて、パッチワークの校舎とともにジリ貧となってしまいます。
学校のビジョンを明確にして、それを情報発信していくことに「木造の校舎」が使えます。
都市木造といわれる大規模木造はまだ目新しい建築で、市町、都道府県、林野庁などを巻き込んで、補助金を得ながら建てることができます。
昨年3月に竣工した木造の体育館など、総工費の約1/2もの補助金を得ることができました。
こうした補助金交付を期待できる期間としては、木造校舎のJIS改正もあり加速する可能性を秘めているため、ここ数年といったところでしょうか。
補助金交付には準備期間を含めて2年以上かかります。
本当にラストチャンスなのかもしれません。
人・建築設計所 高橋貴大さんの学校・設計事例
画像 | 建物の名称 | 紹介文 |
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南アルプス子どもの村小中学校体育館 | 2014年3月、大規模木造の体育館を建設した。これら建築群は、学園の目指す元気な子ども達の育成のため、すべて木造でつくられた。体育館は、県産材を利用したスパン17メートル×27メートルのトラス組みとして、ミニバスケットボールコート1面を内包する。 | |
南アルプス子どもの村小学校 | 敷地は山梨県南アルプス市の扇状地に位置している。特産の桃やサクランボの果樹園が広がる台地からは、富士山や北岳、八ヶ岳を望むことができる。建物は2010年に、小学校棟と寄宿舎1棟を建設。 |
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