片流れ屋根で変化に富んだ室内空間・石濱建築設計事務所 石濱 守さん


 
片流れ屋根にすることで変化に富んだ室内空間をつくることができます。
片流れ屋根について石濱建築設計事務所 石濱 守さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 石濱建築設計事務所 石濱 守 の写真
愛知県知立市谷田町本林3-8-2
0566-83-1199

 

片流れ屋根とは何でしょうか?

 
文字通り片方向(一方向)に雨を流す屋根ということになります。
一枚の比較的大きな片流れ屋根で設計できることもあれば、2~3枚の片流れ屋根を組み合わせることもあります。
 

 
比較して、二方向に雨が流れるように、屋根の中心に棟をつくる屋根の掛け方を切妻屋根と言います。
特に木造住宅の場合、自然に小屋組みを考えれば、切妻屋根になります。
 
あえて片流れ屋根にするということは、何か「意図」があるということではないでしょうか?
私の事務所の場合は内部空間のデザイン上の表現から「片流れ屋根」を選択している訳ですが、
 

 

 
他の意図としては、
① 外観デザインへの拘り
② 複雑な平面形状の場合に屋根に谷ができることを回避するため
③ 太陽光発電パネルを載せる大きな屋根が必要
などが考えられます。
 

貴社が片流れ屋根を手がけるようになったきっかけがありましたら教えてください

 
プランニングの課題として、スキップフロアーやロフトや勾配天井など、変化ある空間を表現する手法の一つとして取り組んだことです。
 

 

 

 

片流れ屋根の勾配はどれくらいがいいのでしょうか?

 
1.5寸程度の実例が多いです。
私の事務所では室内空間のデザインを優先してプランする過程で屋根形状・勾配が決まります。
当然、屋根葺き材による勾配の制限がありますので、緩勾配の場合は長尺の金属板葺きが多くなります。
 
また、太陽光発電を載せる場合はメーカーによって勾配の制限もありますので考慮が必要です。
 

片流れ屋根でおしゃれな外観にするコツを教えてください

 
屋根形状は建物の外観デザインの観点から最も大きな要素です。
屋根によって建物の印象が決まるといっても、過言ではありません。
 
その屋根の選択肢の一つが片流れ屋根ですが、「おしゃれ」感覚には個人差があります。
私は片流れ屋根においては、軽く伸びやかな方がデザイン性が良いと感じています。
一枚の比較的大きな片流れ屋根が出来れば、シンプルで見栄えのするデザイン表現になると思います。
 

 
 

片流れ屋根のメリット・デメリットを教えてくください

  
片流れにすることで変化に富んだ室内空間をつくることができます。
室内空間のデザイン表現が屋根と整合していれば、メリットと考ることができます。
 
デメリットは特にないですが、雨対策に若干の配慮が必要なことです。
 

片流れ屋根の雨漏り対策はどのようにしていますか?

 
屋根本体はシンプルなので特別な配慮は必要ないと考えています。
水上部屋根の軒裏と外壁の取り合い部分は雨水が壁内に入らないように、外壁の透湿防水シートを軒裏まで張伸ばすようにしています。
 

片流れ屋根の軒の出はどれくらいにしていますか?またその理由も教えてください

 
片流れに限らず、屋根は本来、雨を避けるため以外にも日射をコントロールする機能も必要と考えています。
 
パッシブシステム(注1)の考え方から、南側(主に水下側)は90cm程、出します。
夏季の日射を室内に入れないで、冬季の日射を十分に室内に取り込むために。
その他の面は若干小さくすることもあります。
 
(注1)パッシブシステムとは環境がもっている、日射・風・気温・地温などのエネルギーを有効に活用する建物の造り方や設計手法を言います。
 
自然エネルギーを有効活用することで、人間にとってより快適な環境を創造し、省エネルギーにも貢献できます。
  

瓦でも片流れ屋根は可能でしょうか?

 
不可能ではないですが、瓦の場合4.5寸前後の勾配が必要で、プラン上、室内空間の構想と一致させることが難しいと感じてます。
 
片流れ屋根は軽く伸びやかな方がデザイン性が良いと感じています。
 

片流れの家の設計で工夫した点を教えてください

 
「片流れの家」の事例では、南北に細長い敷地形状を生かしたプランニングをしました。
片流れ屋根は南北約10.5mの長さがあり、2階の全室を一つの屋根で覆います。
 

 
2階の各室の天井は片流れの屋根に添って勾配天井となっており、変化に富んだ室内空間を創り出しています。
水上側の天井が高くなる部分に寝室とウォークインクロゼットを配置し、クロゼットの上部には小屋裏物入を計画しました。
 

 
屋根勾配は小屋裏物入の天井高さが1.4mになるように計算してあります。
寝室は高い天井高を確保でき、ハイサイド窓からの明かりが入り、吹抜け感覚を味わうこともできます。
また、南面している2階子供室は片流れ屋根の軒の出寸法を1.10mとすることで、日射のコントロールをしています。
 

 
夏季は日射が室内に入らず、冬季は日射を十分に取り込むことができる、軒の出寸法です。
また、2階の南面全面にバルコニーを設置し、掃き出し窓とすることで、夏季には床面近くから風を取り入れることができます。
 
バルコニーは1階のリビングダイニング南面窓の日射コントロールをする屋根の役割もしています。
パッシブシステムの考え方を取り入れた自然調和型の住宅です。
 

 

片流れの家・断面図

 

↑片流れの家・断面図

片流れ屋根の家を建てたいと思っている方にアドバイスがあればお願いします

 
パッシブな建築手法と一致する設計の中で志向することが望ましいと考えます。
屋根形状は平面計画を始めとするプランニングの過程で自ずと決まります。
片流れ屋根のデザインだけを目標にすることは避けた方が良いと考えます。
 

石濱建築設計事務所 石濱 守さんの片流れ屋根・設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
野寺の家

市街化調整区域に建つ若いご夫婦の為の住宅。
アイランドキッチンのある広いダイニング。
家族参加のできるダイニングキッチンです。
キッチンに続く洗面・脱衣・浴室、食品庫を兼ねた納戸など、コンパクトな動線計画です。

片流れの家

4人家族のシンプルなデザインのコンパクト住宅。
厳しい敷地条件ですが、家族の団欒スペースとしてリビングダイニングを確保できました。
キッチンは洗面・浴室へ繋がり、又、ホールや階段に抜けることもできます。

新川の家

片流れの緩い勾配屋根の平屋の家です。
家の中心に円弧を描くスクリーン壁を配置し、つながりながら視界をさえぎる工夫をしました。
動線が良いことを強く要望され、家の中心にスクリーン壁・キッチン・食品庫・納戸を配置し、周りを一周できるプランとしました。

原崎町の家

1宅地を3区画に切った土地で、プライバシーを確保できることが重要な条件でした。隣接する住宅の窓等を考慮し、間取りをプランしました。
リビング階段、スタディコーナー、畳コーナー等要望は明確でした。

新田の家

片流れの平屋の家。片流れ屋根でできた高さのある空間を生かした家です。リビングに面したスキップフロアの子供室。その下部は広い物入です。多くの物を収納したい要望に答えることができました。床下物入は寝室とアウトドアの用具の出し入れの為に外部からアクセスできるように工夫しました。

 

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