パッシブデザインで極力機械的な空調システムを使わなくても生活できる・森建築設計 森健一郎さん


 
パッシブデザインの建物は自然エネルギーを有効活用したデザインなので、極力機械的な空調システムを使なくても生活できるようになります
 
パッシブデザインについて森建築設計 森健一郎さんに伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 森建築設計 森健一郎 の写真
横浜市中区本町6-50-1ヨコハマ創造都市センター2F106
090-9134-2670

 

パッシブデザインとはなんですか?

 
パッシブは直訳すると「受動的な」というような意味になります。
パッシブに対する対義語は「アクティブ」で積極的なという意味ですね。
 
両者を見比べると何やらアクティブの方が勝っているように感じますし、「受動的なデザイン」と言われてもどんなものか分かりませんよね。
 
これは例えてみると分かり易くなります。
海の上の船をイメージしてください。
 
風を帆に受けて前進するヨットと、スクリューを回転させて前進するモーターボートです。
両者は共に人が操作して海の上を前進しますが、前者は風という自然エネルギーで前進し、後者はガソリンなどを燃焼させて得るエネルギーを使って前進します。
 
このように、自然エネルギーを上手に使いながら建築手法やデザインに取り入れるのがパッシブデザインです。
 

貴社がパッシブデザインの建物を手がけるようになったきっかけがありましたら教えて下さい

 
広義な意味でのパッシブデザインは建築設計を始めたころから意識していました。
 
太陽角度を計算して庇の出幅を設定したり、風の流れを読んで窓の位置を決定する、南側に落葉樹を植えるなどの一般的なパッシブデザインです。
 
より専門的なパッシブデザインに取り組み始めたのは13年前に自邸を建築した後です。
自邸は南側の公園と北側の多摩川の景色を取り入れて東西の住居の存在を感じないよう窓の位置を大きさを決定し、夏の陽ざしが室内に入らないように庇の出幅を決定しました。
 
このような設計意図は高い効果をあげてとても気持のよい空間にはなりましたが、温熱環境的には快適なものにはなりませんでした。
 
このような経験から、断熱性能や日射遮蔽性能、日射取得性能、換気回数などを設計時に計算で確認しながらプランやデザインを決定する設計手法で設計するようになったのです。
 

 

パッシブデザインのメリットとは何ですか?

 
自然エネルギーを有効活用したデザインですので、極力機械的な空調システムを使わなくても生活できるようになります。
結果的に消費エネルギーを減少させ空調ランニングコストも少ない建築になります。

私が昨今設計した住宅では年間光熱費は12万円~15万円程度で生活されています。
そのうち冷暖房費に占める金額は年間2万5千円程度です。
広い視点で考えると温暖化防止にもつながります。
 
意匠デザイン的にパッシブデザインのメリットを考えると、大地に根を下ろしたような普遍的なデザインに近づくように感じます。
 
光、風、温度差などの自然な要素と向き合い有効活用しながら設計していきますので、室内の温熱環境が自然な状態で快適域に近づく住宅にもなります。
 

パッシブデザインのデメリットを教えて下さい。

 
私が行っているような定量的な数値で性能を確認しながら設計していると、ある種鎖で片足を固定された状態のような動き辛さを感じることもございます。
 
窓の位置や大きさ、庇の出幅、建物形状、色、間取りなど、自然エネルギーを有効活用することを考えていくと自由なデザインは出来ない面があるのです。
 
しかしよく考えると建築の設計というのは様々な規制との戦いであり、敷地の規制や法規制、予算による制約や施主の要望など様々な条件のなかの一つであり、それらを乗り越えた先に真のデザインがあると考えて実践しています。
 

パッシブデザインの建築を設計する際に注意していることを教えてください。

 
そうですね、計算ばかりの頭でっかちにならず、竣工後の建て主の声を積極的に聞いたり、竣工後の温湿度実測や光熱費収集などを通して設計と実際の差異を常に肌で感じながら次の設計に活かすようにしています。
刑事は現場100回などといいます
 
が、温度や湿度、風などの目に見えない要素と建築デザインの関係なので自分の肌で感ずる感覚はとても重要だと感じます。
 

 

パッシブデザインの事例・町田のナチュラルハウスで工夫した点を教えて下さい。

 
パッシブデザインで工夫した点で特に申し上げたいのは断熱性能と窓面積の関係です。
日本には四季があるので冬だけとか夏だけの快適性に特化した住宅にならないよう気を配りました。
 
冬は日射熱だけで室内が快適域に達するように家全体の断熱性能と窓の日射取得性能のバランスを図りました。
 
中間期は窓を開ける事で自然な通気が発生するように水平方向と垂直方向の通風ルートを確保し人が滞在する場所を風が流れるように工夫しています。
 
夏は直射日光が室内に入らないように取り外し式の大きなテントを南側に設置できるようにしました。
大きなテントの下で毎朝コーヒーを飲むのが建て主様の楽しみのになっているとお聞きしました。
 

パッシブデザインにはどのような手法があるのでしょうか?

 
採光、通風、日射取得、日射遮蔽、熱利用(地熱、放射冷却熱、気化熱など)、色選定など様々な手法がありますが、最も重要なのは適切な断熱性能をを確保することです。
 
上記の様々な手法を活かす為にはまず第一に適切な躯体性能が必要なのです。
 
例えば通風利用を考えたとき、適切な窓位置で通風性能を上げたとしても、断熱性能が低く外部の日射熱が室内壁面に達しやすい構造では室内の表面温度から受ける輻射熱で体感温度が上がってしまいます。
 
このように断熱性能は冬だけのものではないのです。
まず第一に建物躯体の断熱性能を適切な性能に設定する、これがパッシブデザインで最も重要なことです。
 
 

パッシブデザインの建物の間取りで注意している点があったら教えて下さい。

パッシブデザインの間取りで注意しているのは、開放的ななかに落ち着けるスペースを設けることです。
家のなかを極力間仕切りのない開放的な空間とすることで、夏の通風効果を高め、冬の室内環境を安定させることができます。
 
反面、開放的にするとプライバシーの低下、音や臭いの問題などが発生します。
これらの問題をクリアしながら各人が落ち着けるスペースを作ってあげるようにしています。
 
開放的な空間とするための建築手法としては第一に引戸があげられるでしょう。
開閉できる引戸はとても重宝します。
 
引戸やドア上に欄間を設けたら開閉式の通風子扉を設けることもあります。
天井まで壁を立ち上げず1,5mや2.0mの高さで止めることで開放性を高めながらプライバシーの度合いを調整することもできます。
 
あとはそうでね、断熱性能が高まってきたことで吹抜けを作っても不快感を感じないようになってきましたが、吹抜け上部の窓からのコールドドラフト(冷風落下)と上下温度差の問題は残ります。
 
吹抜け上部には大きな窓は設けない、吹抜け上部にプロペラファンや小さなエアコンを設置して夏稼働させることでずっと快適になります。
 

 

町田のナチュラルハウスの間取り

町田のナチュラルハウスの間取り

パッシブデザイン認証制度とはどのようなものですか?

 
パッシブハウスの認証制度としては民間団体が運営している「パッシブハウス大賞」や「エコハウス大賞」などがありますがパッシブハウスに特化した公的な認証制度はありません。
 
公的にあるのは省エネ性能を認証する制度だけです。
省エネ性能とはつまり二酸化炭素排出量のことです。
 
ZEH(ゼロエネルギーハウス認証制度)、CASBEE(エコロジー度の認証制度)、低炭素住宅認証制度などがありますが、今後はBELS(べルス)に一本化されすと言われております。
 
BELSは「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称で、「ベルス」と読みます。 同じ計算法に則って一次エネルギー消費量を算定する。消費者にとって、省エネ性能というモノサシで建物の「燃費」を横並びに比較できる認証制度です。
 

貴社も認証を取得しているのでしょうか?

  
長期優良住宅、低炭素認定住宅など依頼されれば取得していますが、クライアントにとってのメリットが薄いためお勧めはしていません。
上記のBELSは住宅版は本年度開始された制度ですがこれは今後の物件で取得していきたいと考えています。
 

パッシブデザインの建物を建てたい方になにかアドバイスがあればお願いします。

 
パッシブデザインの設計手法は様々あることをご説明しました。
これからパッシブデザインの建物を建てたい方に言いたいことは、「定量的な数値や視覚的な表現で効果を確認しなさい」ということです。
 
目に見えない自然エネルギーを活用するものなのでイメージや感覚で設計してしまう設計者がとても多いのですが、そこに落とし穴があるのです。
失敗しても数値での確認が無ければ成功なのか失敗なのか分かりませんし、そもそも失敗している事に気付かない設計者も多いです。
 
計算やシュミレーションで確認することを設計条件に掲げて設計依頼をしてください。
もちろん計算やシュミレーションを行っても設計値と現実とのギャップはありますが計算無しに行うよりもずっと誤差が小さくなります。
 
見掛け倒しのパッシブデザインにならないよう建て主様は強く主張してください。
 

森建築設計 森健一郎さんのパッシブデザイン・設計事例

   

画像 建物の名称 紹介文
ルーフライトハウス

・耐震等級3
・熱損失係数 Q値2.34W/m2K
・夏季日射取得係数 μ値0.041
・エネルギー性能 65.62GJ
・年間ランニングコスト 161000円
・木造平屋 延床面積105.09m2

横浜の二世帯住宅

・耐震等級3
・熱損失係数 Q値2.00W/m2K
・夏季日射取得係数 μ値0.034
・エネルギー性能 親世帯:50.84GJ、子世帯:47.26GJ
・年間ランニングコスト 親世帯:84000円、子世帯:97000円

町田のナチュラルハウス

・耐震等級3
・熱損失係数 Q値2.05W/m2K
・夏季日射取得係数 μ値0.028
・エネルギー性能 48.48GJ
・年間ランニングコスト 99000円
・木造2階建て 延床面積89.75m2

そらまどのいえ

・耐震等級3
・熱損失係数 Q値2.04W/m2K
・夏季日射取得係数 μ値0.031
・エネルギー性能 50.84GJ
・年間ランニングコスト 110000円
・木造2階建て 延床面積88.61m2

横須賀の家

・耐震等級3
・熱損失係数 Q値2.23W/m2K
・夏季日射取得係数 μ値0.047
・エネルギー性能 57.94GJ
・年間ランニングコスト 180000円(プロパンガス給湯のため高めとなっている)

 

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