二世帯同居の工夫

ユーザー 祐成大秀建築設計事務所 祐成大秀 の写真

二世帯同居の秘訣
これは一言で表現するのは非常に難しいお題です。
ただ良く耳にする「スープの冷めない距離」とか「つかずはなれずの関係」という言葉は、結構的を得ていると思っています。夫婦同士でも意見の相違や考え方が違うわけですから、その同士が2組になれば当然いろいろな問題が生じてきます。 

意見の相違や価値観の違いをどのように解決していくのか、二世帯同居のひとつのかたち、完全分離型の二世帯住宅の場合を取上げて書いてみようと思います。
完全分離型とは、玄関、お風呂、台所、リビングなどなど各世帯独立した住戸です。今回紹介する二世帯は分離された二世帯がひとつ屋根の下、おなじ建物のなかに住んでいます。

通常の完全分離の二世帯住宅の玄関は横並びにすることが多いですが、この住まいは、玄関があっちとこっちを向いています。なぜそんな形なのでしょうか? 

親世帯玄関
子世帯玄関

計画時の家族間の打ち合わせヒアリングで
・夜食事に出かけて遅い時間に帰ってくることもある
・片方の世帯の来客時に出かける、帰ってくることもある
・外出時、帰宅時に顔を合わせることもあり、毎回気分が良いとも限らない
という理由から、玄関を別々の位置に設置して欲しいという要望がありました。

はじめはそれほど頻繁に起こらないことを理由に別々の位置に玄関を・・・とも思いましたが、家族間の要望でもあったので別の位置に別の表情の玄関を設置しました。
玄関とは外部との接点となる場所であり、プライバシーを守る扉でもあります。プライバシーを守るというと、外部からの保護する、守ることをイメージしますが、二世帯住宅の場合は家族間のプライバシーやそれぞれの世帯の友達や近所づきあいという多様なプライバシーを守る必要も出てきます。正確にはひとつの世帯では気にしないプライバシーを守ることで、二つ世帯が上手く同居することができるようになるのだと気付きました。「玄関版つかずはなれづの関係」がこの二世帯住宅のキモとなりました。 
家族間で何回も話し合いを行い、いくつかの計画案を元に生まれたキモでもあります。 

 
二世帯住宅の形は千差万別、どれが正解であるとは言えません。二世帯住宅の秘訣があるとすれば、やはり家族間での話し合いであり、コミュニケーションであると思います。納得の行く話し合い、上手なコミュニケーションができれば二世帯同居は上手くいくでしょう。