木造耐火、SE構法

ユーザー TAM建築設計室 新井敏洋 の写真

SE構法は木造の接合部を金物とし堅牢な構造躯体とした木構造です。
構造材は集成材を使用するため、大きな空間などが可能となります。
但し、施工はSE構法の登録店のみとなり構造コストもアップします。

私どもは10年ほど前にSE構法の設計講習を受け、その後、SE構法事業会社のNCNの主催する
「長期優住宅」「温熱環境」などのセミナー参加を通じ、会社自体にも好印象を持っていましたが、なかなかSE構法と結びつく計画はありませんでした。

3年ほど前に防火地域の3階建住宅の依頼があり。
敷地状況、要望、予算より木造耐火3階建、SE構法をクライアントに提案しました。
私どもの計画は、SE構法を使用すれば外周壁(床・屋根)が木造の耐火構造体で、
内部は間取り変更が自由な間仕切が可能になるという提案です。(RC壁構造のようなもの)
木造耐火では構造の壁、床・天井、屋根・天井を全て5cm厚程度の耐火材(主に石膏ボード)で包むため、相当な重量が構造に加わる上、エレベーター設置があり、どうしても堅牢な木造システムが必用でした。

木造耐火も特殊な仕様のため設計者講習を取得しました。

次に施工体制の確認をしました。
SE構法も木造耐火も登録店制度があります。NCNが木造耐火の協賛会社であることは認識していましたが、
両者の登録店が私どもとクライアントの希望をかなえられるかは不安でした。
クライアントとホームページなどで施工者の目星をつけ、最後は施工者の現場や人となりを確認させてもらいました。
特命となりましたが、基本設計で工事金額の概略を把握したので、この方向で進めることとなりました。

木造耐火、SE構法を採用してみて、
NCNのSE構法の設計はいつも私どもが構造設計者と打ち合わせるような親密なかたちがとれました。
また、施工者(SE構法、木造耐火登録店)も設計事務所の施工を行うところなので、普段通り、私どもが作製する施工図に沿って丁寧に施工を進めてもらいました。
実施設計図は見積を取るためのもので施工図でブラッシュアップするため、何枚もの図面を施工者に回していきます。
また、施工中もクライアントとアイデアを出し合って追加、変更があるため設計者を嫌がるところもあります。
私どもが行うDIYイベントにも協力してもらいました。

木造耐火構造は2年ほど前に設計者講習取得のみで耐火仕様を購入・使用が出来るようになり、施工体制に自由度が増しました。
施工者はメンテナンスを考えると地域性が大切になります。登録店制ですとなかなか良い出会いは限られると考えます。
SE構法を採用する場合は、そこを十分考える必用があります。

小さな面積の町割を細街路で結びまだ多くの木造建物を残す場所にあります。
街の面影は懐かしく、愛着を持って住み続ける施主のための住まいです。
木造が好きな施主のために木造耐火と将来の変化を考え、在来に比べ少ない構造壁で出来るSE構法を選びました。
古い木造家屋は1階に庇が付き、上下2段に見えることから、1階外壁仕様と2階を分けました。
屋根の形状や色合いは古い木造家屋の規則に倣っています。