「旗竿地」について

ユーザー 三浦尚人建築設計工房 三浦尚人 の写真

先月に竣工した住宅が、「旗竿地(はたざおち)」でした。

旗竿地、または「敷地延長」略して「しきえん」ということもありますが、間口の狭いまるで竿のようなアプローチの奥ばった先に旗のような土地をこのように呼びます。

広い敷地でも道路に面している部分が少なく奥行きのある土地を分割する場合に、このような「旗竿地」はよく見かけます。
この時、道路と接する竿部分の長さは、建築基準法上少なくとも2メートル以上必要ですが、多くの場合2.5メートル以上は確保されています。
それは車を置くスペース、つまりカーポートとしての役割りを兼ねていて、一般的には駐車スペースの幅は2.5メートル以上必要だからです。

不動産的価値から言うと、旗竿地はほとんど土地の四方を隣家に囲まれていて、しかも敷地形状からも上下水道やガス、電気などといったインフラ設備の引き込み距離が長く、その分余計に建設コストがかかってしまうので、敷地条件としてはあまり良いとは言えず、土地価格も決して高くはなく、むしろ周辺相場よりも安いです。

ここまで読むと、旗竿地はデメリットばかりでメリットは無いのでは?と思うかも知れませんが、メリットもございます。

間口の狭い竿の部分に何も建てなければ、道路斜線制限を考慮する必要がほとんどなく、北側斜線制限のみ影響を受けることになります。
しかも、道路から奥ばったところに玄関を配置すれば、むしろ防犯的にも優れている土地であるとも言えます。

写真は先月竣工した「旗竿地のコートハウス」というタイトルの住宅を道路から撮ったものですが、道路からのアプローチの正面には玄関ドアはもちろん、窓さえもあえて設けませんでした。
しかも道路側からは、建物の奥にある中庭は全く見えないようなプランにしました。
実は、正面に見える平屋部分には、水廻りが並んでいます。

その理由は、水廻り設備を出来るだけ道路から近い場所に配置することにより、インフラ設備の距離を短くして建設コストを抑えるためです。
もちろん周囲には隣家が建っていますので、それらも十分考慮に入れたプランにより、採光と通風を確保しています。

したがって、上物である住宅本体に予算配分の割合を大きくしたい方には、周辺相場よりも安いこのような旗竿地を候補として考えるのも良いのではないでしょうか。