ホールダウン金物

ユーザー オフィス・アースワークス一級建築士事務所 小松原敬 の写真

日本の在来工法は木の梁と柱を組み合わす工法でこの工法はジョイント部の強度が一番重要になります。
梁と柱で構成される建築は「ジョイント部の強度が建物強度のすべて」なのです。コンクリート造でも重量鉄骨造でも同じ事が言えます。
そして、コンクリートや重量鉄骨ではジョイント部を剛接合といって強固な接合にすることができるのですが、在来木造ではピン接合といって耐力なしを前提にした接合として扱います。
 
ジョイント部には地震の時に二つの力がかかります。
 
a 建物を横から揺さぶられる事でジョイント部がナナメに変形していく力
b 柱と梁が引っ張られて抜けてしまう力
 
aに関しては周知されている力です。木造在来工法ではジョイント部に耐力は見込みません。
鉄骨やコンクリートのように剛接合にする方法がこれまで無かったからです。
最近の一部の金物工法では、剛接合にできるようになってきましたが、それはあくまで特殊な工法として分類されるので在来工法ではありません。
耐力ゼロをどのように補強するかというと、筋交い補強や構造用合板等の面材での補強です。
筋交い等を作ることで、ジョイント部にナナメの変形が起こる力が加わる事自体を防ぐわけです。
 
bの力をきちんと計算するようになったのは2000年からです。この力を専門用語ではN値と表現します。
現在は在来工法ではプレカットと言って工場で組み合わせる仕口を加工してくるのですが、在来工法は柱が細くそれに見合った単純な形なのでこの仕口では引き抜く力に対抗できません。
ですので外付けの金物で補強する事が必須になります。
すべてのジョイント部を計算して、算出したN値に合わせた補強金物を選択して、大工さんが後付けで横から施工するのです。
このジョイント部は2階建てなら1階と2階の柱の柱頭部分と柱脚部分すべてになります。
これらはコーナー金物やホールダウン金物と言って、その選択と施工はとても重要です。
きちんと設計が壁量計算してN値を算出して、それに沿ったホールダウン等の金物を施工することが耐震上とても重要なのです。