しろあり対策

ユーザー オフィス・アースワークス一級建築士事務所 小松原敬 の写真

横浜の設計事務所です。 
 

しろありは家には厄介なものですが、自然界には必要な生き物です。
しろありが倒木や枯れ木、落ちた大きな枝を食べてくれ、食べたしろありが他の生き物の餌になる為に自然が循環していきます。
しろありがいなければ腐朽菌だけでは処理しきれず、いつまでもそれらが残ってしまいます。
ですので、しろありは何処にでもいます。
家には寄せ付けないようにしなければいけませんが、無闇に駆除するのもよくありません。
ベイトシステムなどの駆除方法は家以外のしろありも駆除してしまうので使い方に注意が必要です。 
 

以前リノベーションの為に柱だけにした家の写真を添付します。
このように土台はおろか筋交いや柱までも浮いた状態になっていました。
リノベーションは何件もやっていますが、乾いている場所は築年数が経っていても意外に大丈夫です。
しかし、雨漏りや水漏れは家の大敵です。一旦濡れる状態が続くようになると途端に被害が広まります。
ここも雨漏りがしていた所でしろありが巣食っていました。
風呂場廻りも昔は防水がきちんとしていなかったので土台がやられている事が多いです。  

新築するときの対策ですが、一番重要なのは雨漏り水漏れをおこさないことです。
風呂場廻りの防水や屋根・外壁・窓廻りの雨仕舞をきちんと設計・施工することは重要です。
意外な盲点に換気口廻りがあります。換気口廻りのシールは電気屋さんが行う事が多く、シールが甘くて雨漏りしてた事があります。
また、床下は点検できない場所がないように設計する必要もあります。点検口を複数つけて行けない場所がないようにします。
しろありの蟻通の発見や駆除、水漏れの発見には床下に潜れることが大事です。
ベタ基礎はある程度寄せ付けない効果はありますが、立上りの打継部から侵入したりもするので打継部に水の侵入防止も兼ねて止水板を私は入れます。  

 

建築基準法では防腐防蟻剤を地上から1m以下の構造体に塗るように決められています。
しかし、今までの防腐防蟻剤は揮発性の農薬系のもので数年もすれば効果がなくなってしまいます。
一度、建てた家にもう一度防腐防蟻剤を施工するのは難しいです。
また、揮発性なのであまり人体には良くないです。
以前はクロルピリホスというシックハウスの原因になるものが使われていましたが、今は禁止になっていますが。 
 

それで最近は、ホウ酸塩で処理することが認められて使われるようになってきました。
ホウ酸塩は、塩という名前のとおり水に溶ける鉱物で自然界に普通に存在するものです。
塩なので水に溶かして噴霧するだけで、あとは半永久的に材木に残って効果を発揮します。
ホウ酸というと人体への害を心配する方もいらっしゃいますが、半数致死量は食塩と同じと言われています。
毒性はそれくらい薄いので、昔は消毒薬や目薬や食品保存剤として使われていたくらいです。
ただ、食塩と違って味がなく匂いもなく水によく溶けるので大量摂取事故が時折起こったそうです。
それで食品や薬品には使われなくなりました。
毒性は腎臓がある哺乳類には薄いのですが、昆虫にはよく効きます。
ただし、それも揮発性はないので食べない限り上を歩いても無害です。
人間が柱を害があるほど大量に齧ることはないので危険性はゼロと言っていいです。 
 

処理する部位は法律では地上1m以下となっていますが、家全体に処理することをお勧めします。
と言うのも、最近外来のアメリカカンザイシロアリというのが入ってきていて、彼らは日本のしろありと違って地中からではなく飛んできて軒からとりつくからです。
カンザイシロアリはとりつかれると家全体の燻煙処置などで駆除するしかないのですが、日本では一般的な駆除方法ではなくノウハウをもつ業者さんが少ないです。
カンザイシロアリの被害の進行は地中に巣がある日本のしろありより遅いので放置される事が多く、近隣に広がってしまう被害が見られます。
関東でも何箇所かそうした集中被害を受けてる地域が確認されています。  

 

しろあり対策は家全体の設計と施工をきちんとすることと、ホウ酸処理をすることが大事だと思います。