三世代同居のメリット
三世代同居の住宅は、二世代同居の住まい方で始まったものが若いご夫婦にお子さんが生まれて三世代になったということが多いと思います。日本のように土地の価格が高い国では、親世帯の住居のある敷地に建て替えで二世代同居の形をとり、予算の効率化を図ることが多いですね。旦那様の親との同居となると、奥様の方で躊躇なさる場合が多く、奥様の親御さんとの同居の方が摩擦が少なく素敵に住まわれていらっしゃる方が多いです。
このような住宅については、建築的な様々な工夫も大切なのですが、同居される家族の方たちの心構えがとりわけ大事になります。家庭が、世の中・社会の基本だとすれば年配の者、若い者、そして子供たちといった構成で住まうということは人間社会で大事な、相手を思いやる心の育成にとても寄与する住まい方ですし、日常の助け合いの生活の面でも便利な住まい方でありましょう。
これを建築的な観点から考えてみると、集合住宅のような作り方をしてしまうと、世代の同居という意味が精神的にはあまり意味のないことになってしまいますので、工夫が必要です。プライベートなゾーンとパブリックなゾーンとの作り方に工夫をして、お互いが顔を合わせることが自由にできて、生活の気配が感じられる緩やかな分離の仕方を工夫したいものです。同居ということは、ある空間を共有のものにすることで、スペースの節約になる、あるいは、エネルギー費をまとめることでランニングコストの軽減ということも可能になるということもありましょう。
しかしながら、この多世代同居の住まい方の最大のメリットは助け合える人材が身近にいること、世界観の広がり、視野の拡大、想像力の豊かさにつながっていくことにあります。子供たちは老人がいることで、考え方の多様さや体力的な違いについて肌で感じることができること、さらには人生の先輩である祖父母を通じて生きることの大切さ、喜び、悲しみをより直に感じて、人を敬う心の醸成に大きく貢献することにあります。これらのことが、独立して社会人になったときにどれだけ大きな財産になるかは計り知れません。