オープンシステム
オープンシステムという言葉はあらゆるジャンルで使われています。ITあるいは病院、そして住宅づくり等々です。日本語に訳せば解放した仕組みとでもいうのでしょうか。
住宅づくりでオープンシステムといえば、いわゆる直営工事‐分離発注をすることでもあります。一般的な住宅の作り方が工務店に依頼するとか、住宅メーカーに頼むとか、そこに設計事務所が介在するのは少ないですが(実際にはそれぞれに設計の専門家である人間が携わっていて、設計事務所が設計しているものも多いのですが、名前が出ないようになっている場合が多いでしょう)、オープンシステムでは建築主が直接各種工事業者(たとえば、土工事の会社、コンクリートの会社、鉄筋の会社、大工の会社、左官の会社、塗装の会社、設備の会社などなど、これらは会社ではなくて職人と言い換えてもよいのですが)に個別に発注していくやり方です。まさに分離発注であります。ですから、常駐の工事監督はいなくて、設計事務所が専門家の立場で見積もりをチェックしたり、工程の調整をしたりして施主とともに作り上げていくやり方です。こうすることで、工務店の経費が必要なくなり、コスト削減ができるというわけですが、住宅というものが完成してから後の方がずっと長い付き合いになるということを考えると、メンテナンスをどうするのかといった不安が沸いてくるのも正直なところでしょう。また、設計事務所の作業が増大するということは設計費に影響してきます。
建て主が直接設計し、指示していくやり方は官公庁などでは建前(現在では)として行われてきています。昔のたとえば、東京駅前の中央郵便局などは故吉田鉄郎(昔の逓信省)の設計したもので、素晴らしい名建築です。もっと前の江戸時代までさかのぼると商人の普請道楽で造られたものや、店舗(いまでも店主自ら設計し、施工を指示しながら作り上げて商いをされている方もいらっしゃいます)などでも行われていました。このやり方で成功する場合もありますが、住宅のようにごく一般の庶民が作る場合には、日々の仕事をこなしながらの建築になりますので、大いなる覚悟がいります。半分セルフビルドとしてコストを抑え、なおかつ製作する楽しみを持つという方法もあるでしょう。
オープンシステムを標榜している会社やその協力設計事務所もかなりありますので、皆様にはじっくりと研究・検討されることを願っております。