用途変更について その4
用途変更について その4 (検査済証の無い場合)
弊社が関わりました別事例(実は用途変更ができなかった事例)を概略ご説明します。
鉄骨造3階建て延約310㎡ 建物用途は共同住宅 平成4年に建築確認済を取得しております。この建物の1階部分(現状は店舗)を福祉施設に用途変更したい、とのお話を建築主様より相談を受けました。
現地、図面にて確認させて頂いたところ、建物完成時の建築基準法での検査済証を取得
しておりません。確認申請時の図面と現状が異なっていました。工事中に1階部分を共同住宅から店舗に変更をした、とのことでした。本来ならば、変更確認申請を行なうべきところ、そうした手続きを行うことなく、工事を進めたようです。施工会社の判断のみで行われてしました。工事監理者が不在(機能していない)である場合に起こる問題です。
検査済証が無い場合の用途変更申請は、必ずしも不可能ではありません。前述の通り、現状の建物が建築当時の建築基準法令に適合しているかどうかの調査(既存建物法的適合調査)を行うことになります。このケースも建築主様にその手順、掛る費用、時間を説明し、ご理解の上、この調査を行いました。
鉄骨造の調査は柱、梁の接合部分の溶接状況が特に重要でありますので、天井仕上げ材を剥がして調査する必要があります。
この調査の結果、一部の梁の形状が確認申請時の仕様と異なることが判りました。施工会社側で仕様を変更していたようです。設計者、工事監理者の不在が招いた結果がここにもあります。きちんとしたチェック、是正が当時になされるべきでした。
調査結果をうけて、構造計算書等で再度、変更になった部分の検証を行いましたが、計算結果として、当時の基準を満足することはできませんでした。
建築主様にはその旨、報告をしました。建築主様にはそのことは全く知らないことで、その結果についての責任はありません。残念なことですが、施工をした会社は現在、存在しておりませんので、経緯を問い詰めることもできません。
その報告後、是正方法の検討を依頼され、掛る是正工事費などの概算工事費を算出し、是正工事を行う方向で進めている段階です。