傾斜地の基礎の作り方
さまざまな理由で傾斜地に家を建てなくてはならないことはよくある。そんなときの処理の仕方は、大きくわけて三つある。
①のり面にする
②擁壁を作る
③高基礎にする
工事費が一番安いのは文句なしに①だけれど、のり面の角度は30度以下にしなければならないので、高低差の1.7倍もの敷地が必要と言うことになる。1mの高低差があれば、家を建てる位置を1.7mもずらさなければならない。
かなり広い敷地が必要だし、そもそも30度以上の傾斜の敷地ではまったく平地を作ることができない。
下の写真は傾斜地というほどではなく、1m弱の段差だったのでのり面で処理できている。
コストはともかく、傾斜地に家を建てるために一般的なのは②の擁壁である。
擁壁をつくって、傾斜地の高いほうが低いほうの高さで敷地を均してしまう。
山の斜面を大規模に開発するときなどは、すべてこれである。
難点は、擁壁のコストがかかることと、敷地の中に埋め戻した土の部分があり、そこが軟弱地盤になってしまうこと。とくに、擁壁に近い半分だけ埋め戻し(盛り土)だと、その部分だけ家が沈下するため、大きく傾いたりすることがよくある。
下の写真は、2mほどの斜面を擁壁で処理しているが、沈下を防ぐために家の基礎は杭を打って支えている。
擁壁の鉄筋の向こう側にある黒いパイプが家を支える杭である。
コストをできるだけ抑えて、急な斜面を処理するためには、③の高基礎という方法がある。
簡単に言うと、擁壁と基礎を兼用させるのである。
上の写真の現場は、様々な法的な規制で泣く泣く擁壁にせざるを得なかったのだけれど、そういう事情がなければ基礎と兼用したほうが 当然ながら安くつく。
かなり急な山のなかに建てたのが下の写真である。
敷地のほぼ全面がかなりの傾斜なので、のり面ではとても処理しきれない。
これでもかなり木を伐採したあとの写真。最初に見にいったときはただの山だった。
家自体も床をスキップさせ、基礎の高さを敷地の高さにあわせて、高中低の3とおりにしている。
家の中の段差による暮らしにくさと、基礎のコストを勘案して、最適解を見つけることになる。
なお、このような基礎はちゃんと構造計算をしなければならないので、ご注意を。