建て替えできない家

ユーザー 木の家プロデュース 明月社 山岸飛鳥 の写真

私たち建築家に依頼をいただくのは、圧倒的に建て替えのお施主さんが多いのですが、中には建て替える気満々なのに、建て替えできないというケースがあります。
見た目には普通の家なのに、建て替えのために建築確認申請をだしても絶対に通らないのです。
「再建築不可」と言われます。
 
いわゆるニュータウンのような場所では、そういうことはほとんどありませんが、古くからある市街地や、農地と宅地が入り交じっているような地域では要注意です。
 
いったいどんな時に建て替えができないのかというと、敷地が「道路」に「接していない」場合です。
お察しの通り、わざわざ括弧を付けた部分が重要です。
 
まず「道路」
普通の方は誰でも通れるミチは全部「道路」だと思われるでしょうが、さにあらず。
家を建てるための「道路」は、かなり限定されており、建築基準法で厳密に決められています。
 
ややこしいお勉強をすっとばして、自分の家の前のミチが「道路」かどうかを知りたいときは、市町村の建築指導課(みたいな名前の部署)に行って、「ここは建築基準法の道路ですか?」と聞いてみて下さい。
何号何項のどーたらこーたらと言われると思いますが、とにかくイエスかノーだけ聞いておけばOK。
イエスなら建て替えはできますが、ノーならばできません。(ショック!!)
 
たまにイエスでもノーでもない「みなし道路」というのがありますが、これも手続きは面倒ですが建て替えできます。
 
さて、家の前のミチが「道路」だということが分かったら、次は敷地と道路の境界線を見て下さい。
ふつうは両側のお隣とのあいだが、道路と接している長さになります。
この長さが 「2m以上」ないと、「接していない」=建て替えできない ということになります。
 
余裕があるときや、測量図が登記されているは問題ありませんが、お隣との境がアイマイで、2m有るのか無いのか微妙・・・というケースがあると思います。
ここは天国と地獄の分かれ目なので、お隣と話し合ってしっかり確認してください。
 
2mギリギリで測量図を登記していない場合は、少々費用がかかりますが、測量士さんに依頼して地積測量図を登記しておくことをお勧めします。
今のお隣さんがイイヒトでも、新しい人がどうなるかわかりませんから。

もうひとつ、家の前が「道路」で、見たところ2m以上接しているように見えるのに、敷地と道路の間にわずかに他人の土地が挟まっていることがあります。
幅30㎝くらいの細長い土地が、まるで道路の一部のように挟まっているのです。
嘘みたいな話ですが、私はいままで2回もそういうケースに遭遇したことがあります。
 
ひとつはお隣の人の土地でしたが、もう一件はすでに所有者が分からなくなっておりニッチもサッチもいきませんでした。
何十年も前に大きな土地を分割して宅地にしたときの、測量ミスなどで生じてしまったようです。
 
ということで、2m以上「道路」に接していた方は、一安心です。
ほとんどの方は、大丈夫だろうと思います。
しかし、なかには「道路じゃなかった(;.;)」「2mなかった(>o<)」という方もおられます。
どうしたらいいのでしょうか。
 
再建築不可の家は、残念ながら売値もほとんどつきませんから、売り払って他の場所に行くこともなかなか困難です。
そうなったら、できるのはリフォームしかありません。
 
リフォームならば確認申請をせずに何でもできるのかというとそうではありませんが、木造2階建てであれば、ほぼ何でもできます。
極論すれば、元の建物が少しでも残っていれば、ほとんどを新しい材料に作り直しても、確認申請は必要ではありません。
面積が増えるのはNGですが、元の柱や梁が腐っていたりして、ほとんど入れ替えても問題なし。間取りを変えても問題なし です。

ここまで解体してから、

基礎から作り直して、もちろん柱や梁の傷んだものは全部取り替え、

こうなります。
これ、最初の写真と同じアングルです。
 
3階建てになると、ここまでやりたい放題はできなくて、かなり制約をうけますが、それでも構造を補強して、内外装をキレイにして、部分的に間取りを変えるくらいのことは十分に可能です。
 

 
再建築不可でもかなり希望は見えてきました。
しかし、超えなくてはならない山はもうひとつあります。
オカネ です。
 
建て替えであれば、土地と新しい家を担保にして住宅ローンを組むことができます。
イマドキは1%以下の金利です。
 
ところが、再建築不可の土地は売値が安いのでローンが借りにくいのです。
基本的には担保無しということになり、金利は2%以上で、借りられる金額は1000万まで、返済年数は最長でも15年くらいです。
 
普通の住宅ローンとは大違いです。
土地を担保にするリフォームローンもありますから、安くても土地を担保にして少しでも条件をよくするという手もあるかもしれません。
このあたりは、銀行さんと相談してみてください。
 
そんなわけで、あまりスッキリしない終わり方ですが、
 
・再建築不可ではないかどうか、微妙な方は市役所等で調べておきましょう

・万が一再建築不可でも、絶望する必要はありません
 
ということでした。
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