自然と共生する現代美
投稿日時:
2018-10-02 02:08
歴史と伝統に育まれた古都、京都。高密度な都市空間の中での快適な暮らしと、都市居住文化を形成するため、京町家は自然と付き合い、自然を暮らしに取り込む工夫を重ねてきた。
代表的な京町屋は、一般的に「表屋造」というスタイルで、建てられている。前面に配された、“みせ”と呼ばれる商業・応接スペースと、“おく”と呼ばれる居住スペースを内部の坪庭で分割し、かつ、通り庭という吹抜空間で有機的に各居室を結合することにより、通風や採光を確保する工夫がなされている。自然を積極的に感じる空間には、寒暖や雨風・光のコントラストを巧みに取り入れながら、気持ちよく生活するための人々の知恵の重なりが蓄積されている。また、そうした光の変化や植栽の変化といった、自然との豊かなかかわりを常に感じながら、西陣織や京友禅の美しい色・柄等を創造する美意識が培われてきたともいわれている。いわば凝縮された自然といったところであろうか。
一方、職住共存の都市空間である西陣地域には、「織家建」と呼ばれるスタイルの町家が多くみられる。「表屋造」とは対照的に、“みせ”の間である工場スペースを通りから奥に、“おく”である居住スペースを前面に配しているのが特徴的である。通常、“みせ”は通りに面するものであるが、織機の音が、近隣の迷惑にならないようにといった町衆の配慮から、「織家建」が考案された。千本格子・瓦屋根・虫籠窓により構成されるリズムのある外観は、華奢で洗練された独特の美を形成し、現代においても形を変えて、その価値は再認識されている。
時代の変化に敏感に対応しながら、常に時代の最先端の価値を持ち続ける。
そんな変革・継承の遺伝子も京都の人々に受け継がている伝統かもしれない。