住みやすい家の条件

ユーザー 三浦尚人建築設計工房 三浦尚人 の写真

ひとくちに「住みやすい家の条件とは?」という問いかけに対して、私どものような設計事務所が回答する場合、その質問はとても難しいです。 
 
なぜなら、設計事務所が設計する家は、建て売り住宅のような型にはまった家に住み手が合わせるような家ではなく、またハウスメーカーのように規格化された自由度の限られた狭い範囲でのオーダーメイド住宅でもない、いわゆる一品もの(オートクチュール)であり、二つとして同じ家はなく、その家に住んで生活する建て主家族にとって住み心地がいいと感じさえすればその家は「住みやすい家」であって、仮にほかの多くの家族がその家を住みづらいと感じたとしてもそれは全く問題ではないのです。 
 
そもそも家というものは、場所、家族構成、生活スタイル、趣味などによって異なり、様々です。
10組の家族がいらっしゃれば、10通りの家が出来るはずで、唯一無二だと思います。 
 
しかし、それでは「住みやすい家の条件」の答えにならないので、家全般における「住みやすさ」の条件を4つ挙げてみたいと思います。
・風通しが良いこと
・空間に明暗のメリハリをつけること
・天井高さに変化があること
・明快に分離されたパブリックゾーンとプライベートゾーン 
 
風通しが良いとは具体的にいうと、風の入口と出口を南北方向あるいは東西方向でつくることで、アルミサッシなどの外部建具だけでなく引戸などの内部建具も利用して風の通り道を作り出すことで住みやすい家になります。 
 
空間に明暗のメリハリとは、字のごとく明るい場所と暗い場所で空間の明るさにメリハリをつけることです。
建て主さんから「明るい家」というご要望が多いですが、すべての空間が明るい家はかえって落ち着かずむしろ住みにくい家です。明るい場所と暗い場所があるから明るさが強調されるわけで、家の中にも暗い場所がなくては住みやすい家とはなりません。
また、窓をあちこちにたくさん設けてもただ無駄に明るいだけで、落ち着いた空間にはならず住みやすい家にはなりません。
つまり、開口部の位置と大きさは極力絞って効果的な明暗メリハリのある家が住みやすいと思います。 
 
天井高さに変化があるとは、高さに高低差を付けることと、天井仕上げを変えることの二つを指します。
建築基準法上、居室の天井高さは2.1メートル以上必要とあります。つまりトイレ、洗面室や廊下、納戸など居室でなければ2.1メートルの天井高さは必要ありません。
各スペースの天井高さをすべて同じにすると、空間にメリハリと変化がなく居心地が良くない住まいになってしまいます。
したがって、家族団欒のリビングは天井を高くしたり、吹き抜けをつくったりして天井仕上げを他とは異なる仕様にする一方で、廊下や個室、水廻りなどは、逆に天井高さを抑えることにより、リビングがより一層ゆったりして落ち着いた空間になって住みやすい家になります。 
 
最後に、パブリックゾーン(家族団欒スペース等)とプライベートゾーン(浴室・洗面・個室等)が階やエリアではっきりと分離されている間取りは、一般的に住みやすい家と言えるのではないでしょうか。