平屋の小さい家

ユーザー ARKSTUDIO一級建築士事務所 茶之木宏次+羽木みどり の写真

家はその時その時の生活を内包する場です。
家族の在り方も時間とともに移り変わります。

結婚して子供が生まれ、その子供たちもいずれ家から巣立って、また、老夫婦二人の暮らしが始まるというのは、現代社会の大多数の家族像ですが、
子供たちと賑やかに暮らしていた大きな家は、老夫婦にとっては、毎日の掃除や維持管理も負担となって、もてあます、お荷物ともなってしまいます。

そこで、合わない空間に無理に合わせる暮らしを止めて、思い切って、お二人の生活に合った空間を造りなおし、新たな場所で毎日を心豊かに快適に過ごすことは、その後のお二人の人生にとって、とても有意義なものとなるでしょう。

T様のお宅は、築百年以上経た伝統的な2階建ての住宅で、庭に面した南の位置に四間取りの座敷を構え、日常の大半を過ごすダイニングは北側の暗い場所にありました。

その家は隙間だらけで、冬はとても寒く、暖房をつけても、あまり温まりません。
また、阪神大震災で緩んだ構造体に、いつ地震が来て倒れるかも知れないと、とても心配しながら過ごしておられました。

そこで、その大きな家を改築することを止めて、庭の片隅に平屋のコンパクトな離れを造り、その場所で日常生活が完結できるようにしました。

冬は温かく、夏に涼しい家での機能的な暮らしを手に入れられたお二人は、毎日、これまで生活から切り離されていた庭の木々を眺めながら、健康に心豊かな時を過ごしておられます。