組子に感じる「和」の美意識

ユーザー 株式会社ローバー都市建築事務所 野村正樹 の写真

先日、北海道ニセコ町にあるリゾートホテルを設計する機会に恵まれた。京都から遠く離れた北海道の地にあっても、「和」を感じる細やかなデザインを設計してほしいというのが、クライアントからの要望でもあった。

 ホテル館内には、さまざまな意匠上の工夫がなされているが、なかでも「和」を上品に感じるデザインのひとつとして、メインロビー部分に組子細工=写真=を用いて、日本の伝統美の表現を試みた。

 組子細工とは、釘を使わずに、細かな木片を規則正しく組み合わせて、さまざまな模様をあらわす、日本古来の伝統的な芸術作品であり、その歴史は飛鳥時代の法隆寺金堂にまでさかのぼる。

 現代において、そのデザインは200種類以上あるといわれており、伝統的なものから細かく精巧な幾何学模様まで幅広く考案されている。細やかな細工から生み出される、繊細なその光と影は、日本の建築物独特の技を感じることができる貴重なものとなっている。

 今回、選定したデザインは「麻の葉」と呼ばれる意匠。植物の麻をモチーフに、正六角形と三角形を基調としたそのシンプルなデザインは、ある種の華やかさも兼ね備えた美しい模様を形成している。

 今回、このように大判の組子細工をスクリーンのように設置してみると、その美しさを再認識することとなる。木の温もりと伝統的な幾何学模様が織りなすその美しさは、私たちが持つ「和」の美意識に語りかけてくるようでもある。組子細工の新しい魅力を感じることのできた印象的なプロジェクトとなった。