換気でアンチエイジング

ユーザー アーキシップス京都 古前極 の写真

先日、「天井から水滴が。」とのご連絡があり、慌てて、竣工物件に駆けつけました。
木造住宅に大きなダメージを与える漏水、まず雨漏りを心配します。
調査の結果、原因は雨漏りではなく、天井ふところでの結露と判断しました。

その数日は雪が降り続き、屋根に数十センチの雪が堆積していました。
お施主様は二階の部屋を暖房で温めて、長時間を過ごされていました。
よくあることですが、寒いので換気扇は止めたままだったそうです。
室内の空気が温められて上昇し、換気扇から外部に排出されることなく、天井ふところに侵入します。
雪が堆積した屋根からは、冷たい空気が天井内部に侵入します。
屋根からの冷たい空気と、室内からの暖かい空気が、天井内部の断熱材の表面で出会います。
その結果、天井断熱材の表面に結露が起こり、発生した水滴が断熱材の隙間から天井面に漏れ出したのです。
再発防止に、室内の換気を続けていただくようお願いしました。

生活には水蒸気の発生がついてまわります。
人体から、暖房から、洗濯物から、給湯や調理から。
生活のあらゆるシーンで水蒸気が発生する上に、気密度が上がった建物は自然に空気を排出する仕組みがありません。
シックハウスなど素材の揮発成分が問題になった背景にも、換気不足がありました。
そこで、2時間に1回は室内の空気が入れ替わる24時間換気も義務付けられました。
ところが、換気の重要性があまり浸透していないからか、節電目的で換気扇を消してしまう人は後を絶ちません。
省エネにつながる節電はとても大切な生活の知恵ですが、木造住宅を長持ちさせる換気も、同じくらい大切な生活の知恵なのです。

換気が大切なのは、断熱材に湿度を与えないためです。
木造の骨組である柱、梁、土台の素材は木で、長期間湿度にさらされると腐食やカビが発生しやすくなります。
壁の内側で断熱材に接する柱や梁に湿度を触れさせないために、室内側での換気が重要になります。
家のアンチエイジングは、換気でなされると言っても過言ではありません。

最近では、室内側に防湿シートを施工して、室内の湿度が壁体内や天井に侵入しないよう施工したり、壁体内に通気層を設けて壁の内側を結露させない「外壁通気工法」も定着しています。
全ては壁や天井内部を乾燥状態に保ち、柱や梁の軸組を守り、家の寿命を永らえるためです。

ご自宅の換気扇、今も回ってますか?

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。