契約前の設計料

ユーザー ARKSTUDIO一級建築士事務所 茶之木宏次+羽木みどり の写真

契約前の設計料については色々な説があります。

宇都宮地方裁判所2010年3月4日判決、東京高等裁判所10年10月6日判決では設計事務所が平面図などの図面を提出した時点で発注者であるホテル運営会社と銀行との融資に関する協議がまだ行われていなかったことと、契約書を作成していなかったことなどを総合して、「契約が成立していなかった」と判断し、打ち合わせ費用や、図面の作成行為などはすべて営業活動費用に過ぎないとして、建築設計士からの費用をすべて棄却しています。

しかし、「営業行為についての請求がなされていれば別」というような言い回しもしていることから、逆に考えれば、契約締結前であっても、その準備行為として、費用負担を合意して請求していれば認められる可能性が出てきます。

また、ある弁護士によると、「設計監理契約は要式行為ではないので、書面作成などの行為がないと契約が成立しないものではありません。なので、契約当事者の意思が合致すれば、口頭でも契約は成立します。ただ、契約書などの書面が無いと意思の合致を立証できないだけです。」と言うことです。

どうしても、契約書が締結できないが、先に進む必要がある場合は、図面作成について、値段を示して発注書をとるか、あるいは、事前の準備行為としてある程度の費用を合意して支払う約束をとりつけておくことや、契約締結の意思確認ができるすべてのやりとりについて必ず形に残る痕跡を残しておくことが大切です。