持ち家リスクの傾向と対策

ユーザー アーキシップス京都 古前極 の写真

家を建てる時、住みたい家の具体像以前に、大きな前提があります。
それは、「安全な家」を建てること。
近年は地震や台風など、大きな自然災害が次々に発生しています。
現実に起こった災害から、家を建てる際に参考になる点を考えます。

2016年4月の熊本地震、2018年6月の大阪府北部地震では、改めて、耐震性能の違いが浮き彫りになりました。
被害が集中したのは古い基準の建物で、現在の耐震性能の建物の被害は少なかったからです。
これから建てる家は言うまでもなく新しい耐震性能になりますので、特別な仕様を選択しなくても、報道で目にするような倒壊の可能性は低いと言われます。
現在、建築基準法で求められる性能は、阪神淡路大震災後の2000年6月に改定された「耐震等級1」。
建築基準法で求められるのは「この性能を満たさない建物の建築は認めません。」という基準で、建築確認で図面上の審査を、中間検査で工事現場で施工状況の検査が行われます。
この過程をクリアしないと、工事を始めることも、進めることもできない、と法律で決められた基準です。
現在の新築は一定の耐震性能を担保されていると言えますし、現実の災害でもその効果を確認できました。

2016年4月の熊本地震 住宅調査

その上で考えたいのは、それ以上の耐震等級を求めるか。
いくつかの耐震等級がありますが、近年の地震では「耐震等級3」の建物は、震源の近くでも被害が少なく住み続けることができたと報告されています。
耐震等級3は、建築基準法で求められる耐震等級1の1.5倍の耐震性能があると言われます。
3と1では材料も工事の内容も変わるので、等級に比例して工事費も上昇します。
「工事費を増額して耐震等級をあげるか」の判断は、お施主様に委ねられます。
地盤調査で敷地の地盤が弱いと言われた、近隣で過去に大きな地震被害があった、活断層に近い、など具体的な脅威を感じるなら、高い耐震等級の選択が他の選択に勝るように感じます。
そうでないなら、保険で万一に備えると言う考えもあるでしょう。
火災保険商品の多くで、地震保険特約が用意されています。

ハザードマップ例

では、台風や暴風雨のリスクはどうでしょうか。
大雨や大風の脅威を思い浮かべがちですが、命にかかわる危険は、河川の氾濫による床上浸水です。
リスクヘッジの筆頭は、家を建てる土地を選ぶこと。
2018年7月の豪雨で広島県で起こった河川の氾濫エリアは、ほぼ県のハザードマップと重なりました。
土地購入の際、計画地が床上浸水の指定エリアに入るかは、不動産会社に必ず確認したいポイントです。
ハザードマップはインターネットで検索すれば誰にでも確認できます。
土地購入の前に、過去の水害についての確認もお勧めします。

とはいえ、建て替えなど土地は選べない場合もありますね。
その場合は、建物の構造で対処したり、保険で備える考え方もあります。
また火災保険の補償内容には、大雨で浸水を想定した水災対応商品もあります。

家という財産を持つことは、財産の価値が減少したり、なくしたりする危険性も併せ持つことを意味します。
敷地の特性を把握して、正しい備えをしたいですね。

このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。