「買わない方がいい土地」

ユーザー 青井俊季建築設計事務所 青井 俊季 の写真

法的に問題を抱えた土地はもとより、たとえ価格が安いとしても、住宅を建築するのに不都合な要素を持った土地をあえて購入することは避けた方がいいですね。
一生に一度の家づくりであれば、土地選びはとても重要です。 

しかし、一般の方々が法的な問題を検討したり、不都合な要素を見つけることは、簡単なことではありません。それは、土地や建物といった「不動産」については、義務教育で教えないからです。
一方、土地や家を買うというのは、一生でおそらく一番の大きな買物です。
そこで失敗をしないためには、土地を選ぶ段階から建築家に相談をしてください。 

建築家との家づくりをお考えの方がいちばん「買わない方がいい土地」は、「建築条件付土地」というものです。
少しでも土地探しの経験をお持ちなら、一度は目にされていることと思いますが、これは、土地を購入する際に、建築工事を担当する工務店が条件として決められている土地のことをいいます。
この土地の持つ問題については、以下に詳しくまとめられていますので、参考にしてください。 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BB%BA%E7%AF%89%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E4%BB%98%E5%9C%9F%E5%9C%B0%E5%8F%96%E5%BC%95 

簡単に言うと、土地を購入する段階で、簡単な間取り図が示されただけの建物が、セットで金額が設定されて契約の条件となっているものです。これは抱き合わせ販売行為として、独占禁止法に抵触する恐れのある販売方法とも言われています。 

最も問題なのは、建物に関する細かな仕様やデザインなどが明らかでないまま、施工業者と金額だけが決まっていることです。また、建物の機能性やデザインを考え、建て主の要望を実現していくために必要な設計監理者を、多くの場合は購入者が自由に選任できないため、設計や施工上の品質が担保できず、希望通りの家づくりが困難となる危険性があります。 

また、「建築条件付土地」は、他の一般的な土地物件に比べて、価格が安いことで興味を惹くことが多いのですが、これはセット販売する建物の方に多くの利益を盛り込んで、土地の価格としては安い金額を表示するというからくりなのです。 

私が過去に相談を受けた事例では、もとの販売金額からの大きな値引を提示されることもありました。しかし、建物の仕様が明示されていないわけですから、その値引きは建物の一方的なスペックダウンによるものとしか思えません。 

さらに、土地の販売会社が建物を施工するのではなく、一括して他の業者に下請に出す場合もあるようです。これは建設業法違反の丸投げ方式で、建物の品質をさらに低下させる原因になりかねません。 

このように「建築条件付土地」は、消費者にとっては大変不利でアンフェアな販売方式なのに、いまだに土地売買の市場に普通に存在していて、規制や取り締まりが行われる気配がありません。
法規制が甘いこともあり、業界が自ら健全化の努力をしないのは残念なことですが、消費者側が賢くなって、不利な物件を選ばないことが大切です。