軒の深い家の日当たり

ユーザー 青井俊季建築設計事務所 青井 俊季 の写真

軒の出を深くして、広くて明るい軒下空間をつくった事例です。
軒の出寸法は約1.8mで、二階の大屋根の軒をそのまま南側へ延ばしています。
デッキスペースと物干場、二階のバルコニーに、大きな軒がかかっています。
夏場の強い日差しを遮る日陰を設けたり、多少の雨なら気にせずに軒下の外部空間を使うことが出来ます。奥に見える洗濯物を干すスペースは目隠しの壁で囲っていますが、軒の高さが高いため、十分な日当たりがあります。

大きく張り出した軒下の室内側は、吹き抜けのリビングルームになっていて、二階レベルは全てガラススクリーンとして十分な光を室内に採り込みながら、夏場の強い日差しはカットし、深い軒のデメリットをカバーしています。
床は同じレベルで軒下の広いデッキスペースにつながり、内外連続した空間として使うことが出来ます。

雨の多い湿潤温暖気候の、日本の伝統的な民家は、みな軒の出を深く取っています。
軒の出を深くすることで、夏場の強い日差しを遮り、同時に豪雨により土塗り壁や大きな開口部の障子が傷むことも防ぐという、日本特有の気候から生まれたデザイン的な特徴になっています。
私の事務所の隣でギャラリーとして使っている、茅葺+瓦葺の古民家の軒も約1.2mあり、雨の日でも窓を開けて室内に風を通したり、軒下を外作業で利用したりする事が出来ます。

利用価値が高く、日本の風景を作ってきたとも言える深い軒の家は、一方で室内が暗く、冬場は日差しが室内に入らないために寒いという欠点があります。
古民家を改修する場合は、この欠点を解消するために、使わなくなった小屋裏を吹き抜けにして、屋根に高窓を設ける工夫をしています。
こうすることで、室内の奥の方まで日差しが届き、上下間の通風も生まれて、明るく快適な住空間が生まれます。