農家住宅の売買
農家住宅とは、都市計画法で定める市街化調整区域内にある、農業を営む方の住宅をいいます。農家住宅は、原則として住宅を建てることができない市街化調整区域にも、特別な許可無しに建てることができます。
農家住宅は農家住宅以外の用途に使ったり、第三者に貸すことはできませんが、不動産として売買することは可能です。
しかし、売買によって所有権が移転しても、農業従事者でなければ住むことができません。つまり、農家住宅を購入しても、農家でない人は住むことができないということです。
ところが、市街化調整区域に建っている既存の住宅には、農家住宅と、そうでない一般の住宅があります。現在は、農家住宅でない一般の住宅は、市街化調整区域内に建てることはできませんが、都市計画法が制定された昭和43年以前から建っていた住宅が現在も存在していて、それらの住宅には、農家でない人でも居住することができます。
この市街化調整区域内の住宅が、農家住宅であるかどうかの区別が外見上難しく、建築年が古い物件であれば、所有者が確認申請書類などを保管していない場合もあります。行政庁も一定の年数が過ぎると、確認関係図書は処分しますので、手がかりは役所の倉庫の奥に保管されている建築計画概要書のみであり、それに記載がなければ、判定はさらに困難になります。
市街化調整区域内の農家住宅が、不動産物件として売買される場合、重要事項説明書に農家住宅である旨を記載して買主に説明することが、宅地建物取引士に義務付けられていますが、築年が古い物件になると上記のように農家住宅であるかどうかの判定が困難なために、農家住宅であっても、その記載無しに売買されてしまうケースがあります。
これは、不動産売買の際に、行政が農家住宅であるかどうかのチェックを行う法令や規則がないためであり、物件を仲介する業者の知識量と良心に委ねられていると言っても過言ではないというのが現状です。そのため、農家住宅とは知らずに物件を購入して、何年も居住した後に農家住宅と判明して、居住が継続できなくなったという事例も現実に発生しています。
一般の方が住宅を購入する際に、そのような調査を自分で行うのは非常に困難ですので、農家でない方が市街化調整区域内の住宅物件を購入する場合は、仲介業者に対して、その物件が農家住宅でないことを念のために確認することをお勧めします。