断熱窓の実力

ユーザー アーキシップス京都 古前極 の写真

高気密高断熱住宅を計画する際、もっとも注意する3つのポイントがあります。
それは、
1 断熱 外壁・屋根天井・床の断熱材で、熱・冷気の出入を防ぐ
2 気密 開口部(窓や扉)や屋根天井・壁・隙間の、空気の出入を防ぐ
3 換気 室内温度を保持できる換気扇を採用する
何しろ、冬は熱の50%が窓から逃げるし、夏は70%以上の暑さが窓から入ってくると言われているのです。
窓からの熱の出入りをコントロールすることで、快適な室内環境に近づきます。
さて、どのように最適な窓を選べばいいのでしょうか?

熱貫流率

窓の断熱性能は、「熱貫流率」と言う数値で表現されます。
熱貫流率は、熱の伝えやすさを数値化した「熱伝導率」を元に、素材や厚みを加味して算出する数値で、その物質は1㎡あたりで1時間にどのくらいの熱が伝わるか、を表します。
「金属は熱を通しやすく、木や繊維は熱を通しにくい。」
誰もが経験上そんな感覚を持っていますが、物理学の教科書によると(湿度や温度で変化しますが)、鉄の熱伝導率は83.5W/m.k、乾燥木材は0.1W/m.k前後。
金属である鉄が木材より熱が伝わりやすい感覚が、数値で実証されています。

物質の熱伝導率

窓の素材に注目すると、アルミニウムの熱伝導率は237W/m.k、ソーダガラスは1.03W/m.kとされ、ガラスより障子のアルミの方が、はるかに熱を通しやすいことがわかります。
あれ、ガラスの熱伝導が意外に低い、寒い日に触るとひんやりするのに・・・
と感じるのは当然で、これも使用する厚みや(ガラスはだいたい薄い)、表面の密着度(ガラスは表面がつるっとして手に触れる未着度が高い)などで説明されます。
乾燥空気は熱伝導率が0.0241W/m.kと大変低いことから、ガラスとガラスの間に空気を挟み込む複層(ペア)ガラスや、トリプルガラスの熱伝導率は、単板で用いるより断熱効果が高いこともわかります。
また樹脂の熱伝導率は0.2~0.3W/m.kとされ、アルミより樹脂の障子を使用したサッシが断熱性能に優れることもわかります。

LIXIL LEGARIS

現在国内で発売され採用可能な大手メーカーの商品で、最も熱貫流率が低く断熱性能が高いとされるのは、LIXIL(トステム)の「レガリス」です。
熱貫流率0.55W/m2k、トリプル(3枚)どころか5枚ガラスの樹脂サッシで、85ミリの断熱材を施した壁と同等の熱貫流率と言います。
同じくLIXIL(トステム)のエルスターXはトリプル(3枚)ガラスの樹脂サッシで熱貫流率は0.792W/m.k(いずれもカタログ数値)です。
YKK APでは「APW430」が熱貫流率0.78W/m.k、こちらもトリプル(3枚)ガラスの樹脂サッシです。
このクラスであれば、高いレベルの断熱窓と太鼓判を押せます。

YKKAP APW430

反面、質の高さはコストの高さに直結します。
断熱性能の高い家を計画するときは断熱、気密、換気のバランスそのものが重要なので、コストの裏付けも考慮する必要があります。

超高機能なトリプルガラス樹脂サッシに次ぐ断熱窓は、複層(ペア)ガラスの樹脂サッシや、アルミと樹脂を組み合わせたハイブリッドサッシです。
大手メーカーは性能やコストによって様々なラインナップを取り揃えています。
家を構成する様々な要素の、全体のバランスを俯瞰しながら、窓の性能のレベルやコストについても検討することができます。
日本にも欧米並みの高レベルな断熱窓を採用できる時代が、到達しています。

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このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。