光と健康の関係
サーカディアンリズムとクルーゾフ効果
リモートワークが広がる中、生活習慣の変化による心身の変調も聞こえてきます。
普段の日中に外出する人がずっと家にいると、健康に影響するのでしょうか。
調べてみると、どうやら体内時計と関わりがあることがわかりました。
ほとんどの生物は体内時計を持っています。
脳内の視床下部に存在する仕組みで、体温やホルモン分泌など身体の基本的な機能を、24時間+αの周期で、時間に即して変化させます。
これがサーカディアンリズム、広く体内時計と言われる機能です。
一般的にその周期は24時間より若干長く、ヒトはサーカディアンリズムを地球の24時間周期に一致させるアジャスターも備えています。
この調整によって季節によって違う昼間時間や、時差地域への急速な移動にともなう明暗周期の変化にも、対応することができます。
また人類を含む哺乳類には網膜から直接届く神経回路があり、目から入った明るさの情報は体内時計に伝達されます。
そして朝の強い光は体内時計を早める方向に、夜の光は遅らせる方向に働きます。
このアジャスターを正しく作動させるために、朝決まった時間に起床して外出し、夕方暗くなったら帰宅して就寝に向かう、規則正しい生活が求められます。
リモートワークの長期化による体調変化は、太陽光を浴びる時間や活動時間の減少からサーカディアンリズムが乱れやすいことが、一因かも知れません。
規則正しい生活を送ると、メラトニン効果も享受できます。
昼間時間帯に太陽光を浴びると、睡眠を促進するホルモンである”メラトニン”が分泌され、夜、ぐっすり眠れるようになるのです。
就寝前にテレビや携帯電話の液晶画面など発光体から放出される強い光が視界から入ると、メラトニンの分泌が妨げられ、不眠の原因になると言われます。
実は光の量と色のバランスも、睡眠を含む人の活動や心理に大きな影響を与えることもわかっています。
明るさの指標の一つに「照度=ルクス」があることはご存知の通りです。
光の色を表現する単位には「ケルビン=k」があります。
どちらも照明設計で重視する単位ですが、この二つにの組み合わせには「クルーゾフ効果」と呼ばれる法則があります。
それは「色温度の低い光は照度を低く、色温度が高い光は照度も高く使う。」
「色温度が高い光」は中天のような強い光で、照明ならオフィスや教室など活動シーンで使う光として、隅々まで十分に光が行き渡るよう使います。
高い色温度で照度が低い光は、周囲を陰気な雰囲気にしてしまいます。
「色温度が低い光」はろうそくの炎のような温かみのある光で、電球なら白熱灯のような、温度を感じる色です。
暗めの照度なら暖かくリラックス効果がありますが、低い色温度で照度が高すぎると暑苦しい印象に、人によっては激しく疲労する照明になります。
朝は自然光の下で朝食を取り、外出して太陽光を浴び、日暮れては暖かい色の照明で食卓を囲み、リビングでくつろぎ、光源が見えない寝室で眠気を誘われる。
サーカディアンリズムに基づく光とヒトの関係を知って、健康で快適な生活を維持しましょう。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。