昔の家はなぜ寒い? 住まいと健康の深くて長い関係

ユーザー アーキシップス京都 古前極 の写真

新型コロナウィルスの感染拡大で、家で過ごす時間が増えました。
家族の、社会の、人が暮らす都市全体の健康を考えることも増えました。
住まいと健康の、深くて長い関係を考えます。

寒い家はカラダに悪い。
こうと言われると「いや、厳しい環境に身を置いてこそ、人間は鍛えられるのだ!」と言いたくなりますが、残念ながら事実です。
厚生労働省の調査で、断熱改修前後で住人の血圧が低下したとの報告がありました。
暖かい家が、カラダにいいのです。
よく知られるように高血圧は生活習慣病の原因の一つですが、室温が低いと血圧が上がって高血圧を招きやいのです。
また、住宅内に温度差があると、血圧が乱高下して様々な健康リスクを高めます。

C値

では、日本の家はなぜ寒いのでしょうか。
断熱性能が低い事も原因です。
そして、気密性能が低い、「C値が高い」ことも原因です。
気密性能の指標「C値」は、住宅の総隙間面積を延べ面積で割った数値。
低いほど気密性能に優れます。

例えば冬のある日。
昭和初期建築の、古いお屋敷にいると想像してください。
気密度が低いため、室内には窓や壁の隙間から風がどんどん入ってくる。
室内の空気が外部の風で、自然換気されてしまいます。
でも室内ではあかあかとストーブが焚かれ、顔の辺りはもわんと暖かい。
同時に、足元からスースー冷気が入ってきます。
暖気は軽いため天井から抜け、床下から重くて冷たい空気が侵入します。
これも換気、温度差による自然換気です。
昔の家は気密度が低いため、必要以上に自然換気量が増えます。
暖房をつけ続けないとすぐ冷え始めるのは、この自然換気が理由です。
日本建築学会の「住宅における換気量の簡易予測法」チャートを使えば、この現象を換気回数の数値で確認することができます。

1998年に発表された論文は、モデル住宅を建てて室温を20度に設定し、立地条件や外気温、風速、換気方法に変化をつけて換気回数を測定した実験結果です。
室内の換気能力まで考慮した、引用されることの多い信頼度の高い論文ですが、原図は見づらいため、このコラムではわかりやすく表示しました。

事例1
一般的な住宅地に建つ古い家(C値12)で外部風速5m(普通の風)、外気温は0℃で室内温度は20℃(内外の温度差は20℃)という条件です。
「事例1」右のグラフが条件を表します。
左側グラフで、この場合の換気量は1時間あたり1.7回程度と読み取れます。
内外の温度差20℃は真冬の温度差ですが、約35分に1回は、自然換気で室内の空気全てが入れ替わる結果となりました。
風速8m/s(”やや強め”より弱い風)なら、換気回数は1時間に約3回、実に20分に1回は室内の空気が総入れ替えしてしまいます。
暖房を切った途端に部屋が冷えてくる・・・は、まさにこの現象。
できればこういう家には住みたくないけど・・・現存する日本の家屋の4割程度はこの状態、と言われています。

では同じ条件の場合、高気密住宅の換気回数はどうでしょうか?
詳細は次回のコラムで。

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このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。