細長い家と中庭

ユーザー 三浦尚人建築設計工房 三浦尚人 の写真

細長い家と言ってまず思い浮かべるのは、やはり町家と呼ばれるような間口が狭く奥行の長い家ではないでしょうか? 

一般的に細長い家というのは、たいていその土地の形状に起因しています。 
 
つまり、土地の形状そのものが、間口が狭く奥行が長いため、それに合わせるように細長い家しか建てられないというのが理由です。 

このような細長い短冊状の家は都市部の住宅密集地でよく見かけられますが、最も懸念されることが採光と通風です。 

何故かというと、細長い家の奥行方向(長手方向)の外壁面(両側二面)は隣地に面する部分が多く隣家が接近しているため、これらの外壁に面する居室、特に1階部分の居室に関しては採光と通風がほとんど期待出来ないからです。 

したがって、採光と通風を確保するためには、隣地境界や隣家からある程度の距離を取り、上から光と風を取り込むことが期待出来る中庭、坪庭といった外部空間を設けることが有効な手段になるのです。 

実際に、京町家をはじめとする間口が狭く奥行が長い昔の家には、必ずと言っていいほど中庭や坪庭が家の真ん中あたりに位置し、この外部空間から光と風を取り込んでいます。 

屋根の架からない中庭や坪庭といった屋外空間は、建ぺい率にも容積率にも算入されず、外部から覗かれる心配もほとんど無いため、大きな開口部を設けることが出来て1階の居室にも採光と通風を確保出来る利点があるのです。