心の住む家
「今日のお題」が「間取りだけでも引き受けていただけますか?」でしたので、ちょうど最近考えてることを書きたいと思いました。
ちょっとエラそうになってしまいますが、要望を聞いて間取りを考えるのは、私は得意な方だと思っています。施主の要望をそのまま間取りにしていては、まとまるものもまとまりません。まずは、整理して「何が本当の要望なのか」を考え、限られた条件の中に落とし込んでいきます。
間取りは、たしかに家の設計の中心であるとも思います。なかには、ファサード(外観)からデザインを始める強者もいますが、住みやすさを大幅に犠牲にしてデザインに突っ走る芸術家きどりは、私の方向性とは相容れません。
では、間取り作りだけでも受けたらいいのか、と自問すると、やはりそれは違う、と思うのです。
間取りを作っているとき、同時に3Dが頭の中に浮かんでいます。外観もボヤッと想定しています。それらは同時並行です。
何よりも、間取りを作るためには、何度も何度も話し合い、試行錯誤し、真剣勝負の設計作業が必要です。「ちょっと間取りだけ」というお気軽な作業ではありません。
もちろん、無難な間取りをとりあえずまとめるだけでしたら、そんなに大層なことを言う必要はありません。
でも、そうした中途半端な間取りには、心はこもっていません。
ボクはなんのために家を作ってるんだろうと、ふと考えることがあります。
そして、最近ストンと落ちたのは、「心の住む家を作る」ことだってことです。
人が住みやすい、地震に強い、断熱がいい、そんなことは、ある意味あたりまえの前提です。
ミッションはその先にあります。
心が住むとは、住み手の納得であり、安心であり、しっくりとはまる感覚であり、心が再生していく場であること。
「間取りだけ作る」という作業で、心の住む家を作ることはできません。
※冒頭の図面は本文とは関係ありません。心を込めて設計し、住宅建築誌に掲載してもらった家です。