注文住宅の理由
選択、それぞれの理由
戸建・マンションなど住宅選択の背景を見てみましょう。
国土交通省の「住宅市場動向調査」の最新(2020(R02)年)報告書から、注文住宅を取得した世帯の実情を探ります(グラフすべて同報告書から作成)。
まず、どのような理由でその住宅を購入するに至ったか。
取得した住宅「注文住宅」「分譲戸建(建て売り)」「分譲マンション」「中古住宅」、4つのカテゴリーを見ましょう。
それぞれの第1位を見ると、志向の違いが鮮明です。
・「新築分譲マンション選択世帯(以下省略)」は立地の良さで選ぶ
・「分譲戸建」はとにかく、「新築」「戸建」が欲しかった
・「中古住宅」は何と言っても価格がキメ手
では「注文住宅」選択世帯はどうかと見ると、全体にスコアが低めで、際立つ志向が見当たりません(上のグラフ)。
とりあえずの第1位は「戸建住宅だから」ですが、「分譲戸建」選択世帯と比較すると20ポイント近く低い値です。
取得住宅別で一番高い項目となったのは「信頼するメーカーだから」。
大手メ−カー広告の影響と思われますが、自発的な理由ではなさそう。
注文住宅を選択した積極的なモチベーションは、どこにあるのでしょう。
同報告書の「設備等に関する選択理由」を見ると、違いが見えて来ました。
分譲戸建・マンション・中古住宅を選択した世帯は動きが似ており、飛び抜けて多いのが、「間取り・部屋数」そして「面積」。
重視されるポイントは「部屋数(面積)は十分か」。
対照的に「高気密高断熱」や「安全性」への関心は低めです。
動きがまるで違う、注文住宅を取得した世帯が重視するのは、「高気密高断熱」「デザイン」「安全性」など。
いずれも、住み心地や満足度が上がる項目です。
その実効性を担保する「長期優良住宅」の認定を、注文住宅を取得した世帯のほぼ半数が受けています。
認定取得には工事費以外の費用が必要で、住宅の質がよくなる分、工事費はより高額になります。
半数が高額でも住宅の質が上がる選択をした点に、この層の特徴が現れます。
注文住宅を選択した世帯は、家づくりの過程で住宅の外形的な部分を気遣いつつ、家の質はそれ以上に求める、成熟した家づくりを志向しています。
実際に住宅を購入した世帯から見えるのは、どの選択の場合も、それぞれの世帯が求めるものを見極めて、慎重に計画・実行されている様子です。
なぜ新たに必要か、求めることは何か。
生活のプラットフォームである住宅だから、最良の選択をしたいですね。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。