合言葉は「ZEH水準」
2050年カーボンニュートラルに向けた動き
日本が目指すカーボンニュートラル2050に向けて、様々なフェーズで実現への検討が進んでいます。
住宅建築部門においては昨年8月、国土交通省と経済産業省・環境省が「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省 エネ対策等のあり方検討会」の議論の取りまとめを公表しました。
個人の家づくりに関係が深い内容を見てみましょう。
まず前提として、現在一般的な個人所有の戸建て住宅には、建主が法的に要求される省エネ性能・設備等の設置義務はありません。
あるのは、昨年4月から始まった、建築士による「努力義務」の説明義務だけです。
ここまでの建築行政では主に命を守ると言う観点から、耐火や耐震、バリアフリーの法制化が進みました。
カーボンニュートラルを目標に、いよいよ省エネ法制化の時代が幕開けます。
しかし省エネの考えがなかった既存住宅が多くを占める日本で、いきなり高い基準の法制化を推し進めても、現場に混乱が生じるだけです。
そこで今後約30年をかけて、誘導基準の導入、適用範囲の拡大、周知の徹底を繰り返して、既存住宅平均のカーボンニュートラルを目指す計画です。
まず2022年の今年、現在は「等級4」が最高の断熱等性能等級に上位の「等級5」が、一次エネルギー消費量基準にも「等級6」が創設されます。
断熱等性能等級に限れば、長期優良住宅で求められるは「等級4」。
ZEH認定ではこれ以上の水準を求めますが、そのハイレベルな基準を「等級5」とし、上位等級として新設される予定です。
断熱等性能等級は「外皮の熱性基準」と「一次エネルギー消費基準」の数値で、地域ごとに適正基準が決められます。
「外皮の熱性基準」は、断熱性能を表す「外皮平均熱貫流率」と、日射遮蔽性能を表す「冷房期の平均日射熱取得率」からなりますが、わかりにくいのでここでは断熱性能「外皮平均熱韓流率」だけで説明します。
これまで長期優良住宅で求められた「等級4」は、断熱性能(外皮平均熱貫流率)はUa値で0.87(主な都市部を含む6地域の数値)。
それが今年中に「等級5」に引き上げられ、断熱性能(外皮平均熱感貫流率)はUa値で0.6(6地域)にアップグレードされる予定です。
2023年にはフラット35の省エネ基準適合が要件化(現在は選択肢の一つ)。
2024年には新築住宅の販売及び賃貸における、省エネ性能表示が義務化。
2025年には新築住宅の省エネ基準への適合が、義務化。
2030年、全ての新築住宅をZEH水準に引き上げ、併せて、新築戸建て住宅の6割に太陽光発電等の再エネ設備導入。
これらを建築物省エネ法をはじめとする法令の改正等で法制化。
この取り組みが計画通りに進めば、2050年には「既存建築物を含めて断熱性能のZEH水準の一般化」、「設置が合理的な場所での再生可能エネルギー発電システムの導入が一般化」、住宅部門におけるカーボンニュートラルが達成される、という筋書きです。
合言葉は、ZEH水準
2030年に新築住宅のZEH水準化、2050年にストック平均のZEH水準化。
対象範囲が違えど、いずれもZEH水準が目標です。
ZEHの定義は「省エネ+創エネ=ゼロエネ」ですが、ここでいうZEH水準は創エネを考慮しない省エネ性能で「ZEHオリエンテッド」とも呼ばれます。
省エネは100%、創エネは可能な範囲で100%。
これが日本の住宅の目指す場所と言えます。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。