北道路の日当たり

ユーザー 志田茂建築設計事務所 志田 茂 の写真

タイトルから推測されると思いますが、写真の部屋は、奥が北面です。北側道路の家の2階です。 
この家に来た人は皆、この部屋が北向きだとは思いもしません。十分に明るいからです。

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世田谷区北向きの家・家族7人の2世帯住宅
https://s-coco.net/works/No.4/No.4_0.html
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この家は、東京都世田谷区の幹線通りの「一本裏」という位置にあります。幹線通りには10階を超えるビルやマンションが建ち、そのすぐ裏にあるこの家には、南からの直射光が入る事は期待できませんでした。必然的に北にある道路に対して向き合うしかありませんでした。

「北向き」というだけで多くの人はマイナスのイメージを持つでしょう。
『暗い』 ・・・まさにそれだと思います。
それについて、北向きの家を設計した者としてお話しします。

世田谷区北向きの家外観

世田谷区北向きの家の外観写真です。こんな感じの路地奥にあります。写っている道路が、建物の北です。つまり「北側道路」。
写真は曇りの日でしたが、「北向き」という言葉でイメージするような暗さはありません。
「外なんだからあたり前でしょ」と、きっと多くの人は言うでしょう。
そう、その通りなんです。北側道路と言っても暗いわけじゃありません。
ちなみに、この道路のさらに北側に土地があります。その土地からするとこの道路はどうなりますか?もちろん「南側道路」ですよね。イメージは「明るい」。でも「北側道路」でもあるんです。
つまり、北側だろうが南側だろうが、西だろうが東だろうが、道路って、明るいんです。
 
人の目は、「明るいもの」を見れは明るく感じます。では、家の中から考えてみましょう。 
北にある道路は「明るい」のですからそこに面する窓があれば、住む人の目はその「明るさ」を感じています。
「そうは言ったって家の中は薄暗いでしょう」と言われてしまうかも。
確かに、窓以外の壁は、光に照らされてないので薄暗く、それも目に入るから全体として薄暗く感じてしまいます。 
では、大きな窓だったらどうでしょう?薄暗く見える壁が減り、外の「明るさ」が見える面積が大きくなります。もっと極端に考えてみましょう。道路側の壁が一面ガラスだとしたら、かなり「外と同じ」状態になり、「明るい」と感じるようになります。  
1枚目の写真をもう一度見てください。北側の窓をできるだけ大きくしました。そしてできるだけ天井のまで。そうする事で、北側の方向を見ても目に入るのは「外の明るさ」にかなり近いです。天井面が光に照らされるますから、天井も明るくなります。よってこの家の場合、北の道路側を見ても暗くは感じないのです。

世田谷区北向きの家の明るい階段室

1枚目の写真の左に階段室があります。その階段室と部屋はガラスで仕切りました。階段室の上部にはトップライトがあり、そこから日中は明るい光が降り注ぎます。 

この記事のタイトルは「北道路の日当たり」です。はっきり言いますが、「日が入るのか?」と聞かれれば、「あまり入らない」と答えるしかありません。でも、ゼロというわけでもありません。 
地域にはよるのでどこにでも当てはまる話しではありませんが、5月にもなると太陽はだいぶ北のほうから登りはじめます。夏になれば、南というよりは北側に太陽は上ります。つまり、6月から9~10月くらいは、北側にも陽が当たる時期があるのです。 
「南側の窓」でイメージするような「サンサンと」というのとは違います。けれど「北側の窓=まったく日が入らない」という事ではない事を理解してもらえればと思います。 
道路が真北ではなく東寄り(西寄り)であれば、日が入る時間も長くなります。 

世田谷区北向きの家の階段室上部トップライト

以上お話ししたように、北道路に面する土地や家であっても、かならずしも「日当たりもなく薄暗い家」ではないという事が、分かってもらえたらうれしいです。 
北道路の反対側が公園だったりいい景色が広がっているのであれば、その土地や家を選択してもいいのではないかと私は思います。 
現在住んでいる家が薄暗いのなら、少し大掛かりになりますが、窓を大きくしたり位置を変えたり、トップライと作ったり、内装を明るくしたり部屋の仕切りをなくしたり、する事で、明るい家に変わる事ができます。 
「この家はダメだ」「薄暗くてこの家嫌い」と思わずに考えて工事をする事で、一段と良い家になりますから、不満ばかり言わずに考えてみましょう。
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もしご自分で考えてもよい解決策が浮かばない場合には、ご連絡ください。何か解決方法があるものです。いっしょに考えてみましょう!