「日本の家は寒すぎる」問題
冬に暖かい家はカラダによろしい
観測史上もっとも暖かいと言われた昨秋でしたが、やはり寒波は到来。
自宅では寒さを感じずに過ごしたいものですね。
しかし家の寒さは、感じ方だけの問題ではありません。
医療関係者の間では、冬の室温が死亡原因に直結することが知られています。
研究報告によると、住宅内での循環器系疾患による死亡者数は寒い時期に急上昇、最少の夏場と比較すると2~2.5倍にも跳ね上がります(グラフ上)。
寒さは高血圧を招きやすく、高血圧は循環器系疾患の原因になりやすいからです。
出典:健康寿命を実現する住まいとコミュニティの創造(2009)
寒い家が多い原因は、低気密低断熱の住宅が多いから。
日本の住宅政策は長らく、住宅不足解消と景気対策を目的に、戸建住宅の量的な供給を推進してきました。
購入する側も、住宅には住み心地や快適性よりも、部屋数や広さなど外形的な充実を求めてきました。
また「冬は寒くて当然」との思い込みや、「我慢は美徳」といった価値観も根強く、冬に暖かくない家の量産が続いてきたのです。
一方で北海道など冬の寒さが厳しい地域では、断熱住宅が普及(グラフ上)。
現在では住宅の断熱化が進んだ寒い地域の方が、暖かい地域と比べて冬の死亡増加率が低い結果になりました。
冬暖かい家はカラダにイイ、のです。
資料:スマートウェルネス等推進事業:国土交通省
冬暖かい家=省エネ住宅の作り方
ではどうしたら冬にも暖かい家になるでしょうか?
ポイントは3点、
①壁、床、屋根から室内の暖かさを逃がさない断熱
②窓や玄関扉などの開口部から隙間風を入れない気密
③室内温度を下げない熱交換型の換気
効果的に太陽光を取り込むことができれば、真冬でも少ないエネルギー消費で暖かく過ごせる「省エネ住宅」が完成します。
冬暖かくて気持ちイイ=カラダにイイ。
省エネだからローコスト=家計に優しい。
いいことづくめの省エネ住宅ですが、低くないハードルがあります。
ハイレベルを目指すなら、どれか一つではなく全てを同時に満たすこと。
つまり、断熱・気密・換気扇工事が必要です。
設計段階からの高気密高断熱化が必須になり、新築が圧倒的に有利です。
健康問題であり、環境問題であり
ところで、最近のニュースで東京都が住宅新築時の太陽光発電義務化を決定したとお聞きになった方も多いのでは。
冬暖かい家と太陽光発電の義務化、どう関係するの?
とお感じになっても不思議ではありません。
しかしこの二つはもはや、切り離すことができないこんな関係です。
持続可能な地球環境の保全
→地球温暖化の進行を食い止める温室効果ガス削減
→化石エネルギーの消費削減
→産業・交通・流通・家庭での省エネ・創エネ
→高気密高断熱の家、創エネできる家
→太陽光発電義務化
実は太陽光発電義務化の前提には住宅の高気密高断熱化があり、高気密高断熱の家=冬暖かい家、なのです。
「日本の家は寒すぎる問題」は「住む人の健康後回し問題」であり、地球環境には「エネルギー多消費問題」だったのです。
高齢化が進む日本、資源残量にも環境の自然治癒力にも余裕のない世界。
寒すぎる家を暖かい家にすることは、心地よく暮らし、健康に暮らし、ローコストに暮らし、世界に貢献できる暮らしです。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。