太陽光発電義務化の衝撃
2022年12月15日 東京都都議会で決定
昨年12月の都議会で決定された、新築住宅への太陽光発電設置義務化。
東京都のみならず、全国に波紋を広げました。
京都市も一定規模以上の新築・増築に再生可能エネルギー設備の設置を義務付けていますが、戸建住宅は対象ではありません。
不穏に感じるのは、あたかも太陽光発電パネルという高額機器の購入を、都民に強制するかに見えるところ。
関西人ならまず「なんでやねん、業者の回しもんか?!」とツッコムところですが、気を取り直して「東京都太陽光発電義務化解体新書」を参照してみました。
◎設置義務が課されるのは誰か?
→施主ではなく、事業者
都内年間供給延床面積が2万㎡以上の大手住宅供給事業者(推定50社程度)
◎中古住宅の売買にも適用される?
→新築建物が対象、現存の物件は対象外
◎新築でも施主が設置を望まない場合は?
→設置しなくても施主には罰則規定なし
事業者には、規定に達しない事業者名の公表等、罰則規定を検討。
◎屋根が狭小等の設置に向かない物件にも適用される?
→適用から外れる物件もあり、施主には罰則規定ない
◎建売の場合は?
→該当事業者の建売住宅を購入する際に事業者の説明が義務付け
買主は拒否でき、拒否しても罰則規定はなし
気になる費用負担については、義務が課されるのは事業者なので、事業者負担か施主負担かは不明・・・と都では説明していますが、設置による工事費の上昇が施主負担となるのは、明らか。
望まない施主が強制されることはない、負担費用は電気代と相殺で10年程度で回収可能、との説明もありますが(つまり施主の負担増は織り込み済み?)。
負担軽減策も並行して検討中、細部はこれからのようです。
最大の目的は設置義務という強い言葉で「脱炭素化社会の実現」を広く浸透させること、に見えます。
冒頭の「業者の回しもんか?!」という質問には、「『脱炭素化社会』からの回しもんでっせ!」と答えた方が良さそうです。
ゴールはカーボンニュートラル2050
ではその「脱炭素化社会の実現」とは?
「脱炭素化社会の実現」は地球温暖化の鈍化を目的とした国際公約で、日本は「カーボンハーフ2030」そして「カーボンニュートラル2050」を約束しました。
温室効果ガスの排出を、2030年までに2013年度比46%に削減、2050年までにプラマイゼロまで削減・創エネすると言う約束です。
なぜ2050年かといえば、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「IPCC1.5度特別報告書」に、「産業革命以降の温度上昇を1.5度以内に抑制との目標(1.5度努力目標)を達成するためには、2050年近辺までのカーボンニュートラルが必要」と報告されているから。
世界中、これで方向が決まったのですね。
ここまで進んできた急速な温暖化で異常気象が頻発、山火事、洪水、氷棚の崩落、日本でも台風や梅雨末期降雨の激甚災害化等々、温度上昇の効果は身近な恐怖として体感しています。
遅まきながら「なんとかしなきゃ」というのがこの1.5度努力目標で、その通過点がカーボンニュートラル2050で、その施策の一つが住宅ゼロエネで、東京都民もその一翼を担いましょう、と言うのが今回の条例です。
個人の家づくりと地球温暖化を同列に扱う感覚に慣れませんが、省エネの延長に創エネがあり、創エネの一つが太陽光発電です。
これからの家作りは、脱炭素化社会の実現に一翼を担う行為、でもあるのです。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。