地震による住宅倒壊を防ぐには

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地震大国に住むこと

日本は地震大国、震度1以上の地震は毎日のように発生します。
100棟以上の建物が被災する大きな地震は、年平均で1.5回以上発生しています。
連休中の5月5日に発生した能登半島の地震は、最大震度6強、死者1名、700棟以上の建物が被害を受けました。

写真:平成28年以降の主な地震 気象庁より転載

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表:木耐協サイトより転載

建築基準法で定められる耐震性能は、時代によって違います。
1950(昭和25)年の「旧耐震基準」、1981(昭和56)年の「新耐震基準」、そして2000(平成12)年施行の「現行(2000年)基準」です。
「旧耐震基準」では不十分だったことから、多くの地震災害を教訓に1981(昭和56)年に「新耐震基準」が施行されました。
しかしその「新耐震基準」も阪神淡路大震災で引き抜き圧力への脆弱性が指摘され、2000(平成12)年に金物を強化した「現行(2000年)基準」に改定されました。
住宅性能表示制度による耐震等級では「現行(2000年)基準」は耐震等級1、1.5倍の強度を持つ耐震等級3が木造住宅の最上級とされます。

近年盛んに耐震診断を言われるのは、1981(昭和56)年「新耐震基準」以前に建てられた、現在なら築42年を超える古い木造住宅が対象です。
古い木造住宅は、大地震の際に倒壊する恐れがあるからです。

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悉皆調査報告からわかること
グラフ:熊本地震で倒壊した益城町の建物

教訓を生かすために、大規模な被害を伴う地震が発生すると国土交通省と国立研究開発法人建築研究所による、被災地での悉皆調査が行われます。
直近の2016(平成28)年5月の熊本地震の報告書を読むと、地震による被害の態様が見えてきます。
この地震の大きな特徴は、震度7の極めて大きな地震が2回発生したこと。
死傷者3,000人弱、住宅被害は一部破損まで含めて20万棟に及んだ大災害となり、調査は被害が集中した熊本県益城町周辺で行われました。

報告書によると、益城町中心部の木造住宅のうち「旧耐震基準」の759棟の28.2%、214棟が倒壊しました。
また最初の地震で倒壊した古い木造住宅を調べると、85.7%が「旧耐震基準」の建物でした。
旧耐震基準の木造住宅=築42年より古い木造住宅は、地震に対して脆弱な建物が多いと、言えます。

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古い木造住宅の倒壊
写真:国立研究開発法人建築研究所 熊本地震報告書より転載

古い木造住宅はなぜ地震に弱いのでしょうか。
新耐震基準以前の木造住宅は耐震性能だけでなく、住宅の基本性能への意識が今より薄かったことが挙げられます。

報告書によると倒壊した建物の特徴は、1階に開口部が連なるなど耐力壁となるべき壁配置のバランスが悪いこと。
商店の入り口、屋内ガレージなど連続開口の目的は様々ですが、耐力壁不足はどの地震災害でも報告される倒壊原因です。
また筋交い端部の釘止めなど、耐力壁への認識の違いも見えました。

築42年以上の古い木造住宅だから必ず倒壊するわけではなく、築42年以上の古い木造住宅には構造不足の建物が多い。
だから耐震診断を受けて対策や安心を、と言われるのですね。

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築浅木造住宅の倒壊

実は倒壊した木造住宅の中には、少数ながら比較的築浅の建物も含まれました。
グラフ1にあるように、倒壊した建物の6.9%が「新耐震基準」以降の建物でした。
調査報告書には、設計図面や施工写真を取り寄せて原因調査した内容も記載されていました。

次回に続きます。

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このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。