全館空調の考え方
全館空調の効果だった
猛暑から残暑が長引く夏から初秋、空調を工夫した高気密高断熱の家が快適です。
弊社は20年以上、高気密高断熱の住宅を設計してきました。
空調機器は夏の冷房には壁掛けエアコンを、冬の暖房には床下暖房や蓄熱暖房機を、ご希望に応じて採用してきました。
間取りは吹き抜けを多用して、部屋間の間仕切り壁をなくし、タテにもヨコにも風と光の通りを確保して、開放感あふれる室内を実現してきました。
真夏にお引き渡しした建築主様から、
「リビングのエアコンだけで、家中が一日中涼しいです。」
とお喜びの声が寄せられ、これぞ高気密高断熱の効果と喜んでいました。
よく考えたら、それは全館空調の仕組みではと、最近になって気づきました。
高気密高断熱+空気の流れる間取り→エアコン1台で家中快適。
特別な装置なしに間取りの工夫だけで、全館空調に近づいていたようです。
壁掛けエアコンの欠点が全館空調を求める
現在、一般的な空調は壁かけエアコンで、マイホームブームと共に広がりました。
夏のクーラーとしてスタートしたルームアコンが暖房や清掃機能を追加して、現在では一部屋に一台取り付ける住宅の基本設備に。
省エネ性が高く部屋ごとの操作が可能で利便性が高い反面、室内で温度ムラや強い気流が発生し、快適性が高いとまでは言えません。
一部屋単位での冷暖房は家の中に温度差が発生するため、空調が行き渡らないスペースの結露やカビなど、問題を誘発する要因にもなります。
住宅に高い付加価値を求める時代が到来し、エアコンの欠点を克服して高い居住性を実現する全館空調に、注目が集まっています。
全館空調の種類
現在、大手ハウスメーカーから設計事務所、工務店に至るまで、さまざまなレベルで「全館空調」が広がりつつあります。
住宅の空調を部屋ごとではなく家全体で空調システム化する。
この点に変わりはないのですが、使用する機械や設置の仕方、換気の考え方にバリエーションがあります。
弊社物件で「全館空調」として採用実績がある、または現地で体験できた全館空調は、次の二つの方法です。
①壁かけエアコン方式
手がける設計事務所も多く、ローコストで人気の高い方式。
壁かけエアコンをロフトや床下、その両方に設置、夏はロフトからの冷気を、冬は床下からの暖気を、吹き抜けやスリットを通して床・壁に供給。
機械室が不要で取り入れやすいがオープンな間取りが必須、個室や空間の温度差が残る場合もある。
②ダクト方式
新鮮空気を機械室に取り入れて温度調整、ダクトで各室に供給する方式。
当社が採用する方式で、部屋間の温度差も部屋の中での気流も発生しない。
一年を通して屋内全体が適温に保たれ、快適性が非常に高い。
ランニングコストは安いが、機械室設置など取り付け費用が発生、メーカーによってはメンテナンス契約が必要な場合も。
バリエーションはありますが、壁掛けエアコンとダクトに分かれます。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。