ダクト方式の全館空調
換気+全館空調=全館空調システム
話題の壁掛けエアコンの全館空調効果を、弊社事例も含めてご紹介してきました。
今回は本来の全館空調、ダクト方式の全館空調です。
日本で一般的な空調は壁掛けエアコン、部屋ごとに設置して主に間欠的に使用する設備で、設置した部屋以外には空調効果は及びません。
対して全館空調は家一軒を丸ごと、需要期は24時間室温調整します。
壁掛けエアコンと違い、24時間換気も担います。
24時間連続運転の換気と温度調整で、家の中は常に、玄関から納戸までほぼ全ての場所で、一定温度の新鮮空気で満たされます。
実は全館空調の統一した定義は定まっておらず、「全館空調で換気は第3種換気」など、換気を別扱いする考えもあります。
本稿では、24時間換気と冷暖房をシステム運用する設備とします。
給気、排気、空調
取り入れから排気まで、空気の流れを見てみましょう。
①新鮮空気の取り入れ
→外気を給気口から導入し換気扇で熱交換、熱交換された空気はエアコンへ
→エアコンで温度調整、ダクトを通じて各空間に供給
→供給された新鮮で適温な空気が、空間全体に浸透
②室内空気の排気
給気で常に正圧に保たれるため、室内の空気は部屋の外に押し出されます。
→押し出された空気は常時排気する納戸やトイレへ
→集気された空気はダクトで換気扇へ移動
→換気扇で熱交換されて排気口から排気
③エアコンによる空調
室外に押し出された空気は、通路等に設けた集中排気グリルでも集気します。
→集中排気グリルからダクトを通ってエアコンへ
→適温に調整された空気はダクトを通って室内へ
熱交換型換気扇がカギ
冷暖房時期、外部と室内の空気の換気は、必ず熱交換機を通ります。
熱交換器の機能は各メーカーがしのぎを削って高め合っていますが、国産メーカーでは夏は80%以上、冬も90%近い熱を交換すると言われます。
真冬に外気0度、室内20度と仮定します。
普通の換気扇だと、暖房で温めた20度の空気が排気され、外部から0度の冷たい空気を室内に取り込み、室温が下がる原因になります。
「換気=室温が下がる」と、換気そのものを止めてしまう原因にもなります。
熱交換型の換気扇なら、排気する20度の空気から熱を取り出し、外部から取り込んだ0度の空気を18度にしてエアコンに送り、エアコンが暖かい空気を各室へ。
調整する温度差が少ないため、エアコンは温度調整しやすくなります。
夏季には逆の熱交換で、真冬も真夏も、室内の冷暖房効果を保持します。
省エネ×省コスト
換気扇の熱交換機能で、エアコンは常時、温度差の少ない低負荷かつ高効率な運転が可能になります。
冷暖房効果の持続とともに、高効率運転できる点も、ダクト方式の全館空調が省エネで省コストと言われる理由です。
24時間換気に熱交換型換気扇を採用するのは、高気密高断熱住宅の基本です。
換気扇とエアコンを一体で運転する全館空調で、強い気流や場所による温度差のない、卓越した快適感が得られます。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、アーキシップス京都の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。