外構と庭が住まいの価値を高める——和モダン住宅における“外の設計”という建築家が考える全体の事 。

住まいとは、
建物の内側だけで完結するものではありません。
玄関を一歩出た瞬間に広がるアプローチや庭の佇まい、
建物を包み込むように設えられた
塀や植栽の配置—— これらすべてが
「家」という空間体験の一部です。
特に、和モダン住宅においては、
建築と外構、自然とのつながりの中に、
真の豊かさや美意識が息づいています。
今回のnoteコラムでは、
“外構と庭が住まいの価値を高める”というテーマで、
外の設計が持つ意味や、
和モダン住宅における外空間の在り方、
そしてやまぐち建築設計室が大切にしている設計思想について、
少し書いてみたいと思います。
外構は「家の第一印象」を決める——。
外からの視線と導線を設計する
どれだけ室内空間を丁寧に設計しても、
ご家族も含めて
訪れる人が最初に目にするのは“家の外側”です。
門から玄関へとつながるアプローチ、
塀の高さや素材、植栽の彩り、
そして建物との距離感や抜け感—— 。
それらすべてが「家の第一印象」を形づくります。
この外構デザインが空間全体の調和を左右します。
視線を遮りすぎず、開きすぎず。
敷地の条件や周辺環境にあわせて、
柔らかくプライバシーを守りながら、
街並みにも優しく馴染んでいくこと。
そのために、やまぐち建築設計室では、
一棟一棟の家に対して“外との対話”を重ねるように、
外構の導線と視線計画を繊細に設計しています。
「庭」は暮らしに四季と余白をもたらす——。
屋内との連続性が生む安らぎ
外構の中でも特に重要なのが“庭”の存在です。
和モダンの空間設計において、
庭は単なる装飾ではなく、
「住まい手の内面に働きかける場」として機能します。
季節の移ろいを目で感じられる中庭、
室内とつながるウッドデッキや縁側、
足元を彩る苔庭や飛び石のある小径—— 。
これらがあるだけで、
日常の中に静けさや潤いが生まれます。
また、屋内との連続性を重視することで、
空間は一層広がりを感じさせ、
光や風の通り道ができることで、
暮らし全体の心地よさが増していきます。
設計段階から庭の存在を“内の空間設計と一体”として捉える。
これがやまぐち建築設計室の設計思想です。
「素材」と「配置」が語る、外構の品格
外構や庭づくりで大切なのは、
どんな高価な素材を使うかではなく、
“どのように使うか”です。
和モダン住宅にふさわしい素材選び—— 。
たとえば、御影石や杉板、
鉄平石や焼杉、 玉砂利や土壁、
古材など—— それらは素材の質感だけでなく、
時間の経過とともに味わいを増すものばかり。
しかし、それをどう組み合わせ、
どこにどう配置するか。
そして、それが家のデザインや
生活動線とどう調和しているかによって、
“品格”はまったく異なってきます。
やまぐち建築設計室では、
単に見た目が映える外構を目指すのではなく、
素材の持つ力と、建築との対話を通じて、
住まい全体の美しさを引き出す外構を提案しています。
街並みとの調和——地域性を意識した設計思想
和モダン住宅は、
ただ個として美しいだけでなく、
その土地の風景や文化と共鳴することで、
より深みのある存在となります。
外構はまさに、その「つながり」を具現化する装置です。
奈良という歴史と自然に恵まれた地域では、
景観条例や街のスケール感を意識しながら、
控えめながらも品格のある設えが求められます。
たとえば、
塀の高さを抑えて植栽で視線をコントロールしたり、
素材の色味や質感を周辺の町屋と
揃えたりといった工夫が、
街に溶け込む佇まいを生み出します。
やまぐち建築設計室では、
地域性を深く読み解くことを設計の出発点とし、
「その土地らしい暮らし」の表現として、
外構設計を提案しています。
中と外をつなぐ設計——“間”のある暮らしへ
和の空間には、
はっきりとした境界線がない
“あいまいさ”や“ゆらぎ”が存在します。
室内から庭へとつながる縁側や軒下、
ガラス戸一枚で外気と交わるウッドデッキ、
あるいは目隠しの格子が半透明に外を映す——
こうした「中間領域=間(ま)」をつくることで、
暮らしはより立体的で
奥行きのあるものになります。
やまぐち建築設計室では、
この“間”の演出にこそ、
和モダン住宅の本質があると考えています。
完全な閉鎖でもなく、
完全な開放でもない。
そのあわいにこそ、
の心がゆるみ、
暮らしが息づく余白が生まれるのです。
外構は「暮らし方」そのものをデザインする
最後にお伝えしたいのは、
外構や庭は単なる「外の装飾」ではなく、
住まい手の暮らし方そのものを映し出す “
もう一つの空間設計”だということです。
たとえば、
庭に小さなベンチを設けることで、
夕暮れに佇む時間が生まれ、
季節の花を植えた通路は、
日常の歩行に彩りを添えてくれます。
郵便ポストの位置一つをとっても、
生活動線と心地よさへの影響は大きく、
訪れる人への配慮にもつながります。
やまぐち建築設計室の外構設計は、
「そこに住む人の姿」が自然に浮かび上がるように、
日常と風景がなだらかに
接続された空間を目指しています。
その一歩先にあるのが、
“家そのものが街をつくる”という発想です。
外構と庭は、設計思想を外に“翻訳”する場である
建築家として家を設計する際、
私たちは単に室内の快適さや
動線だけを考えているのではありません。
実は、外構や庭という「屋外空間」こそ、
住まいに込めた思想や物語を、
通行人や訪問者にも開示できる場です。
塀の高さや石の並べ方、
門から玄関までのわずかな傾斜や素材の選定。
それらには、住まい手の価値観、
佇まいの美学、街への礼節といった
“言葉にならない意思”が込められます。
やまぐち建築設計室が大切にしているのは、
「内に込めた想い」を
「外に自然ににじみ出させる」ような設計です。
建物の輪郭だけで終わらせず、
暮らしの余白や、
外からの気配に対する応答までを含めて、
“ひとつの風景”として設えること。
それが、やまぐち建築設計室なりの
考える外構・庭の在り方です。
【まとめ】
外構や庭は、
家の外にある“飾り”ではありません。
それは、住まいの一部であり、
建築の一部であり、
そして、住まう人の内面を映し出す“
もうひとつの表現空間”です。
和モダンという設計思想は、
自然との対話や、素材の奥ゆかしさ、
空間の緩やかなつながりの中に、
「心地よさ」や「もてなしの気配」を生み出します。
そしてその思想を“街”へとつなぐ媒体こそ、
外構であり、庭であるのです。
街の中に、静かに佇む一棟の家。
それが、誰かの人生に寄り添い、
風景に潤いを与え、
未来の記憶になる家であるために。
これからも、やまぐち建築設計室は、
外の空間までを丁寧に設計することで、
暮らしと街、
人の心をつなぐ家づくりを丁寧にと考えています。
やまぐち建築設計室は
その家に暮らす家族の過ごし方を
デザインする設計事務所です。
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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp
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