【車椅子】部分改修だけでは解決できない生活動線の盲点

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

「車椅子を使う家族のために、まずは玄関の段差をなくしてスロープをつけたい」
「お風呂やトイレを広くして、使いやすくしたい」

こういった部分的な改修工事は、比較的取り入れやすいので、多くのご家庭で最初に検討される選択肢なんだと思います。

確かに、その場の不便を解消するには効果的です。しかし、部分改修だけではどうしても見落としてしまう「生活動線の盲点」があると考えています。

1. 部分的な便利さが、別の不便を生む
例えば、玄関にスロープを設けたとします。

確かに。外から家には入りやすくなります。

でも、そのスロープが玄関スペースの多くの占領していたらどうでしょう。

便利になったはずなのに、玄関内での転回が難しくなったり、介助の方が困ることもあったりすると思います。

こういったことって、部分改修をすると、起きてしまうことが多いです。

2. 家族全員の動線とのすれ違い
車椅子を使う本人にとって便利な改修が、他の家族にとっては不便になる場合もあります。

例えば、トイレを広くした結果、家族の生活スペースが圧迫されてしまう。
キッチンやリビングへの通り道が狭くなる。

「使いやすいはずが、家族全員のバランスを欠いてしまう」

車椅子を優先することが大事なのはわかりますが、全体を見る視点が必要なんだと思います。

これも部分改修の落とし穴といえます。

3. 将来の変化に対応できない
子どもが成長する、介助する親の体力が変わる、介助の有無が変わります。
暮らしは時間とともに変化します。

部分改修は「今の不便」を解決することに重きを置きがちですが、将来を見据えた動線設計までは考慮されにくいのが現状です。場当たり的というか。。

結果として、数年後には再度大がかりな工事が必要になることも。

4. 本当に必要なのは「家全体でのシミュレーション」
生活は、点ではなく線でつながっています。

「玄関からリビングへ」「トイレからお風呂へ」「寝室から家の外へ」――。
それぞれがスムーズにつながるからこそ、快適に暮らせるのです。

部分改修では、この「線のつながり=生活動線」が考えきれません。

だからこそ、改修を検討するときには家全体を俯瞰した動線のシミュレーションをすることが大事かなと思っています。

まとめ
部分改修がよくないということではないんです。

ただ。そこだけで安心してしまうと、かえって別の不便が生まれたり、将来の暮らしに対応できなかったりするリスクがあります。

本当に大切なのは、「家族全員の暮らし」「今と未来の変化」までを含めた、家全体の生活動線を設計する視点です。

その視点があるかどうかが、部分改修と本当の意味での「暮らしやすい家づくり」との、大きな違いなんだと考えています。

車椅子のことを考えた家づくりを検討したいと思ってる方は、こちらをご覧になってみてください。

車椅子と暮らす家づくり~子供の未来を考えた~ただのバリアフリーでなく子供が自分らしく過ごせる家