【車椅子】補助金優先の家づくりが抱えるリスク

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

住宅を建てる際やリフォームを検討するとき、「補助金が使えるならお得」と考えるのは自然なことです。特にバリアフリーや省エネ改修などは対象になる制度も多く、経済的な負担を減らせるのは大きな魅力です。
しかし、補助金を優先して家づくりを進めると、思わぬ落とし穴に陥ることがあります。ここでは、そのリスクについて整理してみましょう。

1. 補助金の条件に縛られて「必要な家」にならない
補助金には必ず条件があります。段差解消や手すり設置、省エネ仕様など、決められた工事を行うことで支給される仕組みです。
一見合理的に見えますが、「補助金が出るからその工事をする」という考え方は、家づくりの本質を見失う原因になります。

本来の目的は「家族が快適に暮らせる家をつくること」のはず。
それなのに補助金を優先すると、「本当に必要な場所には手を入れず、対象になっている部分だけ改修する」という矛盾が生まれがちです。

2. 部分改修に偏り、生活全体の快適さが損なわれる
例えば、補助金の対象が浴室やトイレだけだった場合。
そこは改善されても、廊下が狭いまま、ドアが開き戸のままでは、結局ストレスは残ります。
つまり補助金は「部分的な改修」に偏りやすく、生活全体の動線を改善できないのです。

特に車椅子で生活する方や介助を必要とする家庭では、家全体の動線設計が重要です。補助金に頼った部分最適では、家族全員にとって快適な住まいにはつながりません。

3. 将来の変化に対応できない
補助金は「今の状態」を前提に設計されることが多く、利用者の成長や介助環境の変化までは想定していません。
お子さんが成長する、介助する家族が年齢を重ねる――暮らしは変化していきます。
しかし補助金だけを頼りにした改修は、その時点での要件を満たすことが目的化してしまい、数年後には使いづらい家に逆戻りするリスクがあるのです。

4. 本当に大切なのは「補助金+設計力」
補助金を活用すること自体は決して悪いことではありません。
むしろ制度を上手に取り入れることで、経済的な負担を抑えながら快適な住まいを実現することも可能です。

ただし大切なのは、補助金ありきで工事を決めないこと。
まず「家族にとって本当に必要な暮らしの形」を設計し、そのうえで補助金を組み合わせるのが理想です。

建築家や専門家が間に入ることで、

家全体の動線を最適化

将来を見据えた柔軟なプランニング

対象になる補助金の適切な活用

といったバランスの取れた家づくりが可能になります。

まとめ
補助金は家づくりの助けになる一方で、優先してしまうと「部分改修に偏る」「生活全体の快適さを損なう」「将来対応できない」といったリスクを抱えています。

家族が心地よく暮らすために大切なのは、補助金を目的にすることではなく、あくまで暮らしを目的にすること。
そのうえで制度を賢く使うことこそが、後悔しない家づくりにつながるのです。