【奏響の家】防音室は地下に?2階に?正解は…
「防音室をつくるなら、やっぱり地下がいいのかな?」
そう思う方は少なくありません。
一方で、子どもの部屋を2階にするから、練習室も同じフロアにしたいという声もよく聞きます。
実際のところ、防音室は地下と2階、どちらが正解なのでしょうか?
1. 地下室のメリットと注意点
地下は、周囲を土に囲まれているため、遮音性能が非常に高いというメリットがあります。
地上に比べて外への音漏れが少なく、住宅街でも安心して練習できるのが大きな魅力です。
しかしその反面、
・湿気がこもりやすく、調湿・換気対策が必須
・工事費が高額(掘削・防水・排気設備が必要)
・将来的なメンテナンスや用途変更が難しい
といったデメリットもあります。
また、音は外に漏れないけれど、こもりやすいという特徴もあり、
楽器の響きを美しく保つには、音響調整を丁寧に行う必要があります。
2. 2階防音室の特徴
2階に防音室を設ける場合の利点は、家族の生活との距離感です。
1階で家事をしているお母さまが音を気にせず、
子どもは集中して練習できる──そんな暮らしの分離がしやすいのが2階型。
また、風通しや採光の面でも快適で、閉塞感が少ないのも魅力です。
一方で、2階に防音室を設ける場合は、構造補強が欠かせません。
ピアノや防音壁の重量が大きく、床のたわみや振動伝達を抑えるための設計が必要です。
建築計画の初期段階から構造設計士・音響専門家が関わることで、安全かつ快適な空間が実現できます。
3. “正解”は、暮らしのスタイルによって違う
地下か2階か──その“正解”は、実は人によって違います。
防音性能だけでなく、家族の暮らし方をどう考えるかがポイントです。
たとえば、
小学生のお子さまがリビング横で安心して練習したいなら1階。
受験期や専門進学を見据え、集中できる環境を求めるなら2階。
プロ志向や深夜練習が多い場合は地下。
それぞれの生活リズムと家族構成に合わせて、ベストな場所は変わります。
4. 建築家と音の専門家が組む理由
防音性能や音響設計だけでなく、動線・通風・採光・家族の会話──
すべてを考慮したうえで、「どこに防音室を置くか」を決める。
これこそが、建築家と音のプロが協働する意味です。
防音室を“どこに置くか”は、単なる間取りの問題ではありません。
それは、家族の暮らし方そのものをデザインするということ。
まとめ
防音室の正解は、“場所”ではなく、“バランス”にあります。
静けさだけでなく、光や空気、人の気配。
音と暮らしの調和を考えることで、
練習の時間が、家族みんなの心地よい時間になります。