【車椅子の家】介助が楽になる洗面・浴室のレイアウト
車椅子を使うご家族がいる家庭にとって、最も生活のしやすさを左右するのが「洗面」と「浴室」の使い勝手です。
これらは毎日の生活に欠かせない空間であり、介助の負担が最も集中する場所でもあります。
介助する人・される人、双方にとって快適な空間にするためには、レイアウト設計の工夫が欠かせません。
1. 洗面は「向かい合える」配置が理想
多くの住宅では、洗面台が壁に向かって設置されています。
しかし、車椅子を使う方を介助する際には、正面からサポートできるスペースが重要です。
洗面台の前に約90cm以上の余裕があれば、介助者が車椅子の前方に立ち、姿勢を支えながら洗顔や歯磨きを手伝うことができます。
また、車椅子での利用を想定する場合、洗面台の下にひざが入る奥行き(65〜70cm)を確保しておくと、本人も自立的に使いやすくなります。
鏡の高さは、立位・座位どちらでも使えるよう、上下に可動するものや大きめの一枚鏡を採用すると便利です。
こうした“対面性”と“高さの融通性”が、家族のストレスを減らします。
2. 浴室は「動作の流れ」を優先したゾーニングに
介助がしやすい浴室とは、単に広いだけの空間ではありません。
重要なのは、入浴の一連の流れ(移乗 → 洗身 → 浴槽 → 出る)を妨げないレイアウトです。
たとえば、
洗い場の幅を120cm程度確保し、介助者が横に立てるようにする
浴槽の縁を低め(45〜50cm)にして、移乗がしやすい高さにする
ドアを引き戸にして、入浴中も安全に開閉できるようにする
また、脱衣室と浴室の床レベルを揃え、段差をなくすことで、移動の負担を最小限にできます。
見落とされがちですが、「濡れた床での回転スペース」も重要です。
住宅ではなかなか難しいこともありますが、車椅子が方向転換できるよう、洗い場の一角に150cm程度の回転半径を確保しておくと、介助の動きもスムーズになります。
3. 「安全」と「プライバシー」を両立させる設計
介助が必要な空間ほど、家族のプライバシー配慮が求められます。
たとえば、洗面と浴室を完全に一体化させず、引き戸でやわらかく区切るだけでも心理的な安心感が違います。
また、扉の位置を工夫することで、外からの視線を遮りつつ、介助者がすぐに入れるようにできます。
照明は明るすぎず、影ができないよう均一に配置。
浴室内の素材は滑りにくいマット仕上げを選び、安全と落ち着きを両立させましょう。
4. 動線の「短さ」が介助の疲労を減らす
洗面と浴室はセットで設計することが大切です。
たとえば、寝室の近くに洗面・浴室を配置することで、夜間介助の移動距離を大幅に減らせます。
また、脱衣→入浴→着替えの動線を最短にすることで、介助時間そのものを短縮できます。
ナイトウタカシ建築設計事務所では、介助動線と家族動線を重ね合わせながら、無理のない「生活のリズム」を設計します。
まとめ
介助が楽になる洗面・浴室のレイアウトとは、特別な設備ではなく、使う人の動きを理解した設計のこと。
広さよりも「向き」と「距離」を整えることで、驚くほど暮らしやすくなります。
洗面や浴室は、家族の一番近い距離で「思いやり」が形になる場所。
機能だけでなく、心のやすらぎを感じられるデザインで、毎日の介助を少しでも穏やかに。
家づくりは、誰かを“支える”だけでなく、家族みんなが“心地よく生きる”ためのもの。
私たちは、車椅子を使う方も、その家族も安心して暮らせる「家族のための家づくり」を行っています。
▶ 詳しくは【車椅子と暮らす家】公式ページへ
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