回遊動線は本当に必要? 家事効率と暮らしの心地よさから考える、間取りの選び方。

ユーザー やまぐち建築設計室 山口 哲央 の写真

家づくりのご相談を受けていると、
最近とても多く聞く

ご要望があります。

「回遊動線のある間取りにしたいんです」

SNSや住宅情報サイトなどで

目にする機会も増え、
「家事が楽になりそう」
「なんとなく暮らしやすそう」
そんな印象を

持たれる方が多いように感じます。

確かに、

回遊動線には多くのメリットがあります。

ただ、

設計の立場からお話しすると、
回遊動線は“誰にとっても正解”

という間取りではありません。

今回は、
「回遊動線って実際どうなの?」
と感じている方に向けて、
暮らしの目線から、

丁寧に書いてみたいと思います。

家事が楽になる、

という言葉の本当の意味

回遊動線のメリットとして、
よく挙げられるのが

「家事効率の良さ」です。

キッチンからパントリー、ダイニングへ。
洗濯室からクローゼット、各部屋へ。

行き止まりがなく、

ぐるりと回れることで、
無駄な往復が減り、

体の負担も軽くなります。

ただ、実際に暮らしが

楽になる理由は、
単に移動距離が短くなるから

ではありません。

家事の流れが止まらなくなること。

これが、とても大きいのです。

洗濯、片付け、料理。
ひとつひとつの作業が分断されず、
自然につながっていく。

その結果、
「終わった後の疲れ方」が変わります。

家事が“作業”ではなく、
生活の一部として、無理なく流れていく。
回遊動線には、

そんな力があります。

空間は、広さより「感じ方」で決まる

回遊動線には、
空間を広く感じさせる効果もあります。

廊下が少なくなり、
壁が減り、
視線が奥まで抜ける。

それだけで、

住まいの印象は大きく変わります。

実際の帖数以上に、
「のびやか」
「開放的」
と感じられる住まいになることも

少なくありません。

リビング・ダイニング・キッチンが
緩やかにつながり、
家族の気配を感じながら過ごせる。

こうした空間のつながりは、
日々の安心感や、

心のゆとりにもつながっていきます。

それでも、

回遊動線が合わない暮らしもあります

ここで、少し大切なお話をします。

回遊動線は、

人の動きをスムーズにします。

一方で、

人の動きや音、

視線も増えやすくなります。

・静かに過ごしたい時間
・一人で落ち着きたい場所
・来客と家族の動線を分けたい暮らし

こうした価値観を

大切にしたい方にとっては、
回遊動線は

落ち着かないと感じることもあります。

行き止まりのある間取りや、
動線をあえて

シンプルにした住まいの方が、
心地よく感じられるケースも、

実は多いものです。

大切なのは、
流行っているから選ぶのではなく、
ご自身の暮らしに合っているかどうか。

回遊動線が向いている暮らし、

向いていない暮らし・・・・・。

回遊動線が特に向いているのは、
次のような暮らし方です。

・家事を家族で分担している
・在宅時間が長い
・家の中をよく動き回る
・効率と開放感、どちらも大切にしたい

こうした場合、
回遊動線は暮らしをとても

楽にしてくれます。

一方で、
静けさや区切りを

大切にしたい方には、
別の答えがあるかもしれません。

間取りに暮らしを合わせるのではなく、
暮らしに間取りを合わせること。

それが、

後悔しない家づくりにつながります。

動線は、

便利さではなく「暮らし方」で

決めるもの。

やまぐち建築設計室では、
間取りを考えるとき、
「便利かどうか」だけでは判断しません。

どんな一日を過ごしたいのか。
どんな時間を大切にしたいのか。

その答えを一緒に整理しながら、
動線や空間を考えていきます。

動線は、
毎日、無意識に体がなぞるもの。

だからこそ、
その人らしい暮らし方が、
自然と表れる部分でもあります。

正解を探すより、相性を大切に

回遊動線は、

とても魅力的な間取りです。

けれど、万能ではありません。

大切なのは、
「正解かどうか」ではなく、
自分たちの暮らしに合っているかどうか。

家は、暮らしの器。
日々の時間を支える場所です。

だからこそ、
間取りを決める前に、
一度立ち止まって考えてみてください。

その答えを、
一緒に探していくことができれば、
これほど嬉しいことはありません。

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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

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