「こんなこと聞いていいのかな」と思うことほど大事

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家づくりの相談の場で、

少し躊躇したあとに
そっと出てくる言葉があります。

 

「こんなこと聞いていいのかな……」

「こんな初歩的なこと、恥ずかしいんですけど……」

 

そう前置きしてから話される内容は、
たいていの場合、

とても大切なテーマだったりします。

 

たとえば、

お金の不安のこと。
将来の暮らし方のこと。
家族との価値観の違いのこと。

 

図面にも仕様にも書き込めない、
けれど確かに“重さ”のある話。

 

それは、

「聞いていいのかな」と
言葉を選びながら
やっと口に出されたものだからこそ、

その人にとっての
本音に近い部分であることが多いのです。

 

 

ときどき、

「もっと具体的な話をした方がいいですよね」
「細かい条件を整理してから来ればよかったですね」

そうおっしゃる方もいます。

 

でも私は、

そうではないと思っています。

 

言葉になりきれていない不安やモヤモヤを、
そのまま持ち込んでいただく方が、

むしろ設計にとっては
大切な材料になります。

 

なぜなら、

“整理された要望”よりも、

“まだ形になっていない違和感”の方が、
暮らしの核に近いところにあるからです。

 

 

「こんなこと聞いていいのかな」

そう迷ったときは、
どうか、そのまま話してみてください。

 

それが、

正確な質問でなくても、
上手く説明できなくても、
途中で言葉に詰まってしまっても、

大丈夫です。

 

うまく言えない、ということ自体が、
今の状態を正直に表してくれています。

 

 

家づくりは、

知識や言葉が揃ってから始まるものではなく、

「まだ形になっていない気持ち」を
そっと机の上に置くところから
静かに動き出すのだと思っています。