最初の会話で、設計者が静かに見ていること
投稿日時:
2026-01-13 07:06
はじめてお会いして、
テーブルを挟んで向き合っているとき。
こちらから、
あえて多くを話さないことがあります。
沈黙が生まれる瞬間も、
少しだけ、あります。
それは、言葉を探しているからではなくて、
「その方が、何を大切にしているのか」
静かに、感じ取ろうとしている時間です。
家づくりの相談に来られるときって、
すでにたくさんの情報を見て、
比較して、悩んで、
「それでも決めきれない」
——そんな状態の方が、多いように思います。
だから最初の会話は、
要望を整理する場、というよりも、
その方の「今の心の位置」を
少しずつ、探っていくような時間になります。
どの言葉が強く出てくるのか。
どこで声が小さくなるのか。
何度も繰り返すフレーズがあるのか。
反対に、
触れようとしない話題があるのか。
図面よりも先に見えてくるものは、
数字でも
間取りでも
性能でもありません。
その人が、
どんな暮らしに安心を感じるのか。
どこに不安を抱えているのか。
それを、
ひとつずつ確かめるように聴いています。
ときどき、
「ちゃんと説明できなくてすみません」
そう言われる方もいます。
でも、説明できなくても大丈夫です。
むしろ、
説明しきれない感情の中に、
大事な手がかりが
隠れていることの方が多いからです。
最初の会話で、私は
「正しい答え」を探しているわけではありません。
その人が
これまでどんな暮らしをしてきて、
何に違和感を覚えて、
これから先のどんな時間を
守りたいと思っているのか。
その“輪郭”のようなものを、
急がずに、
静かに見つめています。
家づくりは、
図面から始まるのではなく、
こうした対話から
少しずつ、始まっていくのだと思っています。