回復できない家には、理由がある。 たった1㎡の居場所が、暮らしと人生を静かに立て直す設計思想

ユーザー やまぐち建築設計室 山口 哲央 の写真

忙しい毎日の中で、
「なんとなく落ち着かない」
「家にいるのに、なぜか休まらない」
そんな感覚を覚えることはありませんか?。

理由ははっきりしないけれど、
どこか頭が止まらない。

身体は休んでいるはずなのに、
心だけが外に置き去りにされているような感覚。

それは、
あなたの性格や気持ちの問題ではありません。

住まいの中に、
回復するための居場所が
きちんと用意されていない

だけかもしれません。

家は「暮らす場所」である前に、「回復する場所」

本来、家とは
外で消耗したエネルギーを回復する場所です。

しかし現代の住まいは、
便利さや効率を追求するあまり、

・情報が多い
・音が多い
・役割が多い

知らず知らずのうちに、
家の中でも脳が休まらない環境に

なっていることがあります。

だからこそ、意識的に
「何もしなくていい居場所」を
つくる必要があるのです。

回復できない家には、共通点がある

家にいるのに、
なぜか疲れが抜けない。

休日に一日家で過ごしたはずなのに、
月曜日の朝、すでに消耗している。

睡眠時間は足りている。
間取りも気に入っている。
設備にも大きな不満はない。

それでも、
心が回復していない。

この感覚は、
決して珍しいものではありません。

そしてその原因は、
暮らし方や性格ではなく、
住まいのつくり方にあります。

「回復できない家」は、失敗住宅ではありません

最初に、
とても大切なことをお伝えします。

回復できない家は、
多くの場合、

・間取りは合理的
・デザインは洗練されている
・設備も十分

いわゆる「良い家」です。

ただ一つ、
決定的に欠けているものがある。

それが、
人が回復する条件としての「居場所」です。

人は「止まれる環境」でしか回復しない

心理学の分野では、
人が本当に回復するためには、
次の三つが必要だと言われています。

・判断しなくていい
・役割を演じなくていい
・警戒しなくていい

ところが、
回復できない家では、
これらが満たされていません。

家の中にいても、
人はずっと「動き続けている」。

頭の中では、

・次に何をするか
・これを終えたら何か
・あれを忘れていないか

そんな思考が止まらない。

空間が、人を止めてくれないのです。

回復できない家の共通点①

背中が守られていない

回復できない家でよく見られるのが、
背中が無防備な配置です。

・ソファの背後が動線
・背中側から人が通る
・背後に大きな開口や出入口がある

この状態では、
人は無意識に緊張します。

自覚はありませんが、
身体は常に警戒しています。

「くつろいでいるつもりなのに疲れる」
そんな住まいの多くは、
この配置に原因があります。

回復の居場所では、
背中が守られていることがとても重要です。

回復できない家の共通点②

視線が多方向に抜けすぎている

開放的で、
視線がよく抜ける家。

一見、
とても心地よさそうに見えます。

しかし、
回復という観点では、
視線が多すぎることが負担になる場合があります。

人の脳は、
視界に入る情報を
無意識に処理し続けます。

視線が定まらない空間では、
脳は休めません。

回復の居場所では、
視線の行き先は一つで十分です。

回復できない家の共通点③

音が直接届いている

音の問題は、
見落とされがちです。

・キッチンの作業音
・家族の足音
・外部の生活音

完全な無音が必要なわけではありません。

問題なのは、
音が直接届くこと。

回復の居場所には、
音が直接入り込まない
位置関係としての設計が必要です。

回復できない家の共通点④

情報量が多すぎる

人は、
情報の中では回復できません。

・物が多い
・色が多い
・役割が多い

どれも便利ですが、
回復という視点では刺激になります。

回復の居場所では、
見えるものを意図的に減らすことが重要です。

回復できない家の共通点⑤

空間に名前がついている

書斎。
ワークスペース。
スタディコーナー。

名前をつけた瞬間、
空間には役割が生まれます。

役割が生まれると、
人は無意識に
「何かをしよう」とします。

回復は、
何もしないことで起こる。

だから、
回復の居場所には
名前をつけない。

ただ、
そこに座れる場所。

それだけで十分です。

回復できる家は「止まれる家」

回復できない家の共通点は、
すべて一つに集約できます。

止まれない。

動線が止まらない。
視線が止まらない。
音が止まらない。
思考が止まらない。

回復できる家とは、
「止まれる家」です。

そして、
止まるために必要な空間は、
たった1㎡でもあれば足ります。

なぜ、この1㎡が必要なのか

判断の量が多い人ほど、
回復が必要です。

仕事の決断。
人との距離感。
責任の重さ。

これらを日常的に背負っている人ほど、
家の中で
「何者でもなくいられる場所」を
必要としています。

豪華さよりも、
広さよりも、
回復できること。

住まいに求める価値は、
次第にそこへと収束していきます。

回復の1㎡が、暮らしと人生を整える

回復できる場所を持つと、
人の行動は自然と変わります。

・物を衝動的に買わなくなる
・無理な予定を入れなくなる
・人との距離感が整う

これは、
空間が人の行動を
静かに導いているからです。

家は、
何かを頑張る場所ではなく、
何者でもなくいられる場所であってほしい。

もし今、回復できていないと感じたら

今日、
ご自宅をゆっくり見渡してみてください。

何も考えずに、
呼吸できる場所はありますか。

もし、
ひとつも思い浮かばなければ。

それは失敗ではありません。
これから設計すればいい。

1㎡でいい。
椅子一脚分でいい。

回復の居場所は、
暮らしと人生を立て直す起点になります。

この文章が、
住まいと暮らしを見直す
小さなきっかけになれば幸いです。

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■やまぐち建築設計室■
奈良県橿原市縄手町387-4(1階)
  建築家 山口哲央
https://www.y-kenchiku.jp/

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