なぜその希望が出てきたのかを、一緒に考える
家づくりの相談を受けていると、
たくさんの「こうしたい」という言葉に出会います。
収納を増やしたい。
広いリビングにしたい。
回遊動線にしたい。
書斎がほしい。
どれも自然な希望で、
どれも大切に扱いたい内容です。
ただ、私はそれらを
「はい、分かりました」と
そのまま設計に落とし込むことは、あまりしません。
少しだけ時間をかけて、
その希望は
どこから生まれてきたのか
一緒にたどっていくところから、
家づくりを始めることがあります。
希望そのものよりも、
「その言葉に至るまでの経験」や
「何度も頭に浮かんだ記憶」
「モヤモヤの正体」
そちらの方に
大切なヒントが隠れていることが多いからです。
たとえば、
「収納を増やしたい」という言葉の奥に、
片付けられない自分を責めてきた時間や、
家族に気を遣い続けてきた気持ちが
静かに横たわっていることがあります。
「広いリビングにしたい」という言葉の奥に、
家族が同じ空間にいる安心感や、
誰にも邪魔されず過ごしたい静かな時間が
混ざり合っていることもあります。
言葉として表に出てくるのは
“結論の一部”だけで、
そこへ至るまでの気持ちや背景は、
言葉にならないまま
胸の内にとどまっていることが、少なくありません。
だから私は、
希望を「叶える」前に、
希望を「ほどく」ような対話をします。
過去の暮らしのこと。
これまで感じてきた不便さ。
誰にも言ってこなかった本音。
少しずつ、少しずつ、
言葉を探すように話していただくと、
「そういえば、あのときから気になっていて…」
と、思い出すように語られる瞬間があります。
その瞬間に、
家づくりは少しだけ深くなります。
要望を実現することが
ゴールではなくて、
その奥にある感情や価値観を
一緒に見つけていくこと。
それが、
「なぜその希望が出てきたのか」
を考えるということなのだと思っています。
もし、あなたが今、
やりたいことが
うまく言葉にならなかったり、
希望をうまく整理できていなかったとしても、
どうか焦らなくて大丈夫です。
形になっていない想いこそ、
いちばん大切な材料になることがあります。
言葉にならないところから、
一緒に、ゆっくり考えていきましょう。