眺望よりも、守りたいものがあるとき
土地を見に行くと、
「ここからの景色、いいですね」
そんな言葉が
自然と出てくることがあります。
遠くまで抜ける視界。
高い場所から見下ろす風景。
空が広く感じられる場所。
眺望は、
土地の魅力の一つであることは
間違いありません。
ただ、
設計を進めていく中で、
ときどき考えさせられることがあります。
それは、
「この眺めを優先したことで、
何かを犠牲にしていないだろうか」
という問いです。
大きな窓を設ければ、
景色はよく見えます。
でも同時に、
外からの視線や、
強い日差し、
音や気配も
一緒に入ってきます。
眺望を取ることで、
家の中が
落ち着かなくなってしまうことも
あります。
暮らしの中で、
毎日その景色を見るかどうか。
それよりも、
安心して
身体を預けられる場所が
あるかどうか。
どちらを
大切にしたいのかは、
人によって違います。
設計の場では、
「見せたいもの」と
「守りたいもの」
そのバランスを
何度も考え直します。
眺めは、
特別な瞬間を
与えてくれるかもしれません。
でも、
日々の暮らしを支えるのは、
静けさや、
安心感や、
視線から守られているという
感覚だったりします。
だから、
眺望があっても、
あえて
そこを全面的に
開かないこともあります。
一部だけ切り取ったり、
高さを調整したり。
景色と距離を取りながら
付き合う、という選択です。
眺望は、
失われたら戻りません。
そう言われることもあります。
でも、
落ち着きや安心感も、
一度失うと
取り戻すのが
とても難しいものです。
眺望よりも、
守りたいものがあるとき。
その判断は、
贅沢ではなく、
とても現実的な選択だと
私は思っています。
家は、
眺めるための場所である前に、
身を置く場所であり、
戻ってくる場所です。
何を守りたいのか。
その問いに
正直であることが、
長く心地よく暮らすための
大切な視点なのだと
感じています。